日米両政府は28日、電気自動車(EV)向けバッテリーに使う重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の強化に関する協定を締結した。EVシフトが世界で本格化するなか、その中核となるバッテリーの生産と調達で協力を進める。協定締結により、日本で採取・加工された重要鉱物をバッテリーに使い、車両を北米で組み立てれば、北米製のEVに対する米国の税制優遇策の一部が適用される見込み。関連の日本企業にも恩恵が及びそうだ。
日本政府は28日午前に開いた閣議で、協定に署名することを決定。これを踏まえ、冨田浩司駐米大使と米通商代表部(USTR)のタイ代表が同日、米ワシントンで協定に署名した。 バイデン米政権は、2030年までに新車販売の5割をEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などにする目標を掲げている。EV優遇策は、昨年8月のインフレ抑制法に、EV購入などへの税控除が盛り込まれた。
優遇策は、バッテリーに使う重要鉱物の調達地域について、一定割合を米国内か米国と自由貿易協定(FTA)を締結する国とすることなどが要件。対象車両は、1台あたり最大7500ドル(約100万円)の税額控除が受けられる。海外メーカーに不利だとして、日本の他に欧州などが見直しを求めている。
協定では、EV向けバッテリーの生産に欠かせないコバルトやリチウム、ニッケルなど5種類の重要鉱物について、採取から精錬、加工までの供給網で日米間の協力強化を約束。協定締結を踏まえ、米政府は重要鉱物の調達先に関する日本への要件を緩和し、FTAを結んでいない日本も締結国相当として扱う見込み。
西村康稔経済産業相は28日の閣議後記者会見で「持続可能で公平な供給網の確保に向けた協力の強化を通じ、日米、さらには同志国との連携による強靱な供給網の構築を目指す」と協定の狙いを語った。