産業界の女性リーダー育成のため、経済産業省が自社ではなく、他の企業の幹部社員から助言が受けられる新たなメンター(助言者)制度の普及を推進する方針を固めたことが29日、分かった。昨年9月から約6カ月間実施した試行事業で、昇進を望む層が倍増するなど大きな効果が確認できたためで、近く試行事業の報告書や、効果や取り組み方をまとめたマニュアルを公表し、民間による取り組みを促す。
共働き世帯の増加など、日本でも女性活躍の環境整備が進む一方、女性の幹部社員の少なさは課題となっている。人口減少やデジタル化など産業構造が大転換する中で、日本が経済成長を続けるには、女性活躍などダイバーシティ(多様性)の推進は不可欠とされる。
政府も2020年代の可能な限り早期に、指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%にする目標を掲げるが、足元では1割程度と経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の中で最低水準で、大きく後れを取っている。
最大の要因の一つに昇進を希望する女性の少なさがある。男性中心の意識や働き方が根強く残る中で、女性が幹部になるモデルケースが乏しく、相談相手も限られていることが背景にあり、こうした構造的問題が女性の昇進意欲の低迷にもつながっているとされる。
そこで経産省は欧米で効果がみられた企業の垣根を越えたメンター制度について、業種の異なる29社から役員や管理職のメンターと女性社員を集め、50人規模の試行事業を実施した。
その結果、当初は昇進を「望んでいる」と「強く望んでいる」と答えた層は計27%しかいなかったが、試行事業を終えた後は計72%まで増加。昇進に自信を持つ層も2~3割から8~9割へと大きく増えた。
参加した女性社員からは、「社外のメンターだからこそ気兼ねなく話せた」「経営層の視点でモノを考えるようになった」などといった声が上がった。また、メンターからも「相談できる人材や機会が女性に不足していることを感じた」といった、効果を実感する声が多かった。
経産省は今後、複数の企業の連携促進や民間の人材関連会社などが仲介する形で、同様の取り組みが継続的に行われるよう推進する方針という。
女性管理職の比率向上を巡っては、政府は女性管理職比率の情報公開を上場企業に義務付けることを決めるなど、比率向上に努めている。