中国の偵察気球が米国上空に飛来したのを契機に、米中関係の平常化を模索しつつあったバイデン米政権は対中政策を一気に厳しい方向へとかじを切った。最近の米政府高官の発言は、中国との対峙(たいじ)を前提としたものが際立つ。トランプ政権半ばから米中の冷却化が顕著となったのを皮切りに、欧米の有識者の間で「Cold War 2.0」(冷戦2.0)の言葉がよく聞かれるようになったが、これは本当にふさわしい用語なのだろうか。
米ソ冷戦では両者の経済関係は皆無に等しかったが、現在の米中は経済領域のつながりが深い。米国と価値を共有する欧州連合(EU)諸国も中国と密接な経済関係を有しているし、日本もポストコロナ期の経済復興のため中国からのインバウンドに期待を寄せる。つまり、中国とのデカップリング(切り離し)は容易ではないのである。
現在は米ソ冷戦時の様相と大きく異なると感じさせたのが、先日、都内で開催された国際交流基金主催の国際シンポジウム「新たなステージを迎えた日・ASEAN関係」であった。日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の友好協力50周年を記念した行事で、タイ、ブルネイ、ベトナム、マレーシアからの国際政治学者が、目下の国際情勢にどう対応すべきかを語った。