培養肉、万博で2400食提供目指す 阪大、島津製など

コンソーシアム設立の共同会見でテープカットする大阪大学などの関係者ら=29日午前、大阪府吹田市(島津製作所提供)
コンソーシアム設立の共同会見でテープカットする大阪大学などの関係者ら=29日午前、大阪府吹田市(島津製作所提供)

大阪大学や島津製作所、伊藤ハム米久ホールディングス(HD)、凸版印刷、シグマクシスの5者は29日、大阪府内と共同会見し、動物の細胞を培養して作る「培養肉」の社会実装に向け検討を進めるコンソーシアム(共同事業体)を同日付で立ち上げたと発表した。新たな研究拠点を同大吹田キャンパス内に設置。2025年大阪・関西万博で、さしの入った「和牛」の培養肉を自動的に作る装置を展示し、来場者への2400食分の試食提供を目指す。30(令和12)年には一般販売も始めたい考えだ。

培養肉は動物の筋肉や脂肪などの細胞を人工的に培養して増やし、成型して作る。大阪大と島津製作所、シグマクシスは有機物をプリントする「3Dバイオプリント技術」を活用した培養肉の自動生産装置の開発に向けて既に協業している。今回のコンソーシアムでは、伊藤ハム米久HDや凸版印刷が加わり、原料となる細胞の採取や安全性・味などの評価、品質保持に適した専用のパッケージの検討などを進めて、社会への普及を加速化する狙いがある。

万博では「大阪ヘルスケアパビリオン」で、課題となる生産コスト削減につながる培養肉自動製造装置「ミートメーカー」を展示する。また、万博の来場者に向け、会期中の半年間で2400食分、試食の提供も計画しているという。

世界的な人口増による食料不足への懸念や、畜産が水質汚染や温室効果ガスの排出につながることから、環境負荷の少ない培養肉は持続可能なタンパク質として注目されている。米コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、培養肉の世界市場が2030年に250億ドルに達し、世界の食肉供給量の0・5%を占める可能性があると予測しており、こうした背景から海外でも開発が活発化。培養肉メーカーの米イート・ジャストは20年に世界初となる培養肉のチキンナゲットをシンガポールで発売した。

大阪大などのコンソーシアムでは、国内で流通させるには食品衛生法の規制を課題として挙げたうえで、30(令和12)年の一般販売を目指すことを明らかにした。会見で大阪大大学院の松崎典弥教授は「海外ではまだハンバーグや焼いた状態のステーキなど加工食としての培養肉しかない」と指摘。3Dバイオプリント技術を使えば「脂身のさしの構造を自在にコントロールできる」として、生肉を作れる強みを強調した。

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