英国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加入について、日本やオーストラリアなど11カ国が近く大筋合意する見通しであることが29日、分かった。複数の日本政府関係者が明らかにした。新規加入が実現すれば、2018年の発足時のメンバー以外では初めてとなる。日本政府は英参加を足掛かりに、太平洋地域で影響力を強める中国を牽制(けんせい)するとともに、トランプ政権時代に離脱した米国のTPP復帰に向けて機運を高めたい考えだ。
加盟には全参加国の正式な承認が必要となる。年内にも、各国の閣僚がルールや新規加盟を議論する最高意思決定機関「TPP委員会」で承認する見込みだ。
TPPは、モノの関税だけでなくサービスや投資などの自由化を進めている。電子商取引(EC)や知的財産権の保護などルール分野でも厳格なルールを定めており、高い水準の自由貿易を推進する枠組みだ。今後は、英国同様に加盟を申請している中国や台湾への対応が焦点となる。
中国のTPP加盟について、日本は慎重姿勢を崩していない。国有企業に対する優遇措置の実施や知的財産権の保護の徹底が図られていないなどとして、中国はTPPが定めるルール水準に適合していないとみている。一方、日本は英加盟を好機とし、米国へのTPP復帰を強く働き掛けていきたい考えだ。
英国は21年2月にTPPへの加盟を正式に申請し、中国と台湾のほかウルグアイなどが続いた。英国の審査はこうした国々に対しての試金石となるため、加盟国が慎重に協議していた。
英国は欧州連合(EU)からの離脱を機に独自外交を展開し、世界各国との連携を強める「グローバルブリテン(世界的な英国)」戦略を推進。日本とは21年1月に経済連携協定(EPA)を発効している。