大地震の発生から1カ月となる3月上旬、トルコ南部に出張して取材した。車の運転をお願いしたのは最も被害が深刻な地域の一つ、ハタイ県アンタキヤに住んでいたオミトさん(52)だった。

アンタキヤは都市機能が崩壊して経済は壊滅状態だ。オミトさんは知人から、筆者が車と運転手を探していることを聞き、車を借りて運転を買って出た。被災地を一緒に回って3日間で約1200キロ走ったが、観光バスのドライバーだった彼の運転は落ち着いたもので、つい車中でうたた寝するほどだった。

オミトさんの一家5人は長男が暮らす南部メルシンの大学寮に避難した。筆者の拠点は被害が軽微だった南部のアダナで、彼は「夜中でも余震が起きたら被災地に行くかもしれない」と考え、仕事の期間中は家族の元に帰らなかった。

地震では手抜き工事などで被害が拡大したとの見方が多い。エルドアン大統領は「1年以内に被災地を再建する」と述べたが、半壊もしくは損傷した建物の解体が続くなか、拙速な街の再建を懸念する声も聞く。

「1年で再建できるとは思わない」というオミトさんは、いまも職探しの日々だ。彼のような避難民は200万人を超える。日本の地震への備えは万全だろうか。いま一度確認してもよいと思う。(佐藤貴生)

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