富士山噴火 原則「徒歩避難」 高齢者らは車で 広域避難計画策定

駿河湾上空から望む富士山=2月
駿河湾上空から望む富士山=2月

山梨、静岡、神奈川3県などがつくる富士山火山防災対策協議会は29日、富士山噴火時の新たな広域避難計画を取りまとめた。噴火時、一般住民は車での一斉避難ではなく、溶岩流を避けて近くに徒歩で避難する原則に加え、今回の計画では噴火前の警戒段階で、高齢者ら避難に支援が必要な人は車での避難や、学校や幼稚園には休校措置を講じることなども盛り込んだ。

この日の協議会で山梨県の長崎幸太郎知事は新たな広域避難計画について「先進的な対応を盛り込んだものとなっている」と評価し、静岡県の川勝平太知事は「これを基本に県や関係市町村の地域防災計画の加速を求めたい」と語った。

新たな広域避難計画は令和3年3月に見直した富士山噴火のハザードマップを踏まえ、策定した。昨年度中に策定する予定だったが、避難困難者への対応などが検討不十分として、昨年3月に噴火後は「徒歩避難」を原則とする中間報告の公表にとどまった。

今回の計画では、高齢者ら単身での避難が困難な「要配慮者」や観光客らの避難対策が柱。溶岩流を避けるには数百メートル程度移動するだけ済み、道路の渋滞を防ぐため、一般住民は原則、徒歩避難とし、道路は自動車での移動を余儀なくされる要配慮者向けに限定した。

さらにハザードマップで噴火による影響範囲が市街地にも広がっていることから、幼稚園、保育園、学校の避難対策を新たに示した。噴火前の警報段階で休校措置を基本とするが、場所に応じて集団避難を実施した後に、家族へ引き渡すなどの柔軟な対応を図る。

富士山5合目以上の登山客には、噴火警報が出た時点で下山を指示し、それ以外の登山客や観光客についても、帰宅困難者にならないように帰宅を呼びかける。帰宅完了までに噴火に至った場合には、宿泊施設を借り上げて対処する。

今後、広域避難計画を基にして、関係する各市町村が具体的な避難所の設定や、避難訓練を実施する。避難対象エリアにあたる大型の医療機関や高齢者施設は車やバスを活用した避難計画や、実際に避難できる提携施設の選定などを進めていく必要がある。

ただ、富士山噴火はどこが火口になるか判然とせず、不確実性が高い。一般住民の徒歩避難先の施設を明確にすると同時に、徒歩による避難困難者への綿密な対応など、各自治体ではさまざまな噴火シナリオに応じた避難計画策定が欠かせない。

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