【北京=三塚聖平】台湾の蔡英文総統は29日、外交関係がある中米のグアテマラとベリーズ訪問のため台湾北部・桃園国際空港を出発した。台湾メディアによると、往路で米ニューヨーク、復路でロサンゼルスに立ち寄る予定だ。米国滞在中にマッカーシー米下院議長と会談するとみられている。
中国の習近平政権は、蔡氏が米国に立ち寄って米政界要人と会談しないよう強く牽制(けんせい)している。中国で台湾政策を主管する国務院(政府)台湾事務弁公室の朱鳳蓮(しゅ・ほうれん)報道官は29日の記者会見で、蔡氏が米国でマッカーシー氏と接触すれば「必ず断固とした反撃措置をとるだろう」と発言。対抗措置に出る構えを見せ、蔡氏の訪米を認めないよう米側に圧力をかけた。
昨年8月にペロシ米下院議長(当時)が台湾を訪問した際には、中国は台湾周辺で大規模軍事演習を実施しており、今回、中国側がどこまで反発を強めるか注視される。
米ブルームバーグ通信は28日、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、中国の外交担当トップ、王毅(おう・き)共産党政治局員と24日に電話会談をしていたと報じた。蔡氏の訪米についても議論したとみられるが、米中双方ともに会談の実施を発表しておらず溝の深さをうかがわせる。
台湾側の発表によると、蔡氏の外遊は4月7日までの予定。中米のホンジュラスが今月26日に台湾と断交して中国と国交を樹立しており、蔡氏はグアテマラとベリーズへの訪問を通じて両国との関係を固める考えとみられる。
蔡氏は2019年7月にカリブ海諸国を訪問し、その際にも経由地として米国に立ち寄っている。