保津川下り転覆事故 舟に無線なし 消防通報までに30分

会見で謝罪する豊田知八代表理事(中央)ら=3月29日、亀岡市
会見で謝罪する豊田知八代表理事(中央)ら=3月29日、亀岡市

京都府亀岡市の桂川(保津川)で28日に観光客向け川下りの舟1隻が転覆し船頭1人が死亡、1人が行方不明となった事故で、運航していた保津川遊船企業組合は29日、記者会見し、転覆した舟には無線がなく、消防への通報に30分以上かかったと明らかにした。国土交通省のガイドラインでは舟への無線設置が望ましいとされており、組合は「適切な無線を準備している途中だった」とした。

国交省が平成25年に策定した「川下り船の安全対策ガイドライン」では、全ての舟への無線設置が望ましいと規定。組合側は、設置を急ぐよう国交省から定期的に指導を受けており、適切な無線機やトランシーバーを探していたという。

全長約16キロのコースには通信環境が悪く無線が通じにくい場所が存在。今回の舟の転覆後、10分後に出発した後続船が現場から無線で組合本部へ連絡したが、無線が通じにくく、消防への通報に時間がかかったという。

保津川下りで転覆した舟=29日、京都府亀岡市
保津川下りで転覆した舟=29日、京都府亀岡市

また船頭4人のうち、無事だった2人は組合の聞き取りに対し、舵担当の船頭が空振りする「空舵(からかじ)」状態となり、バランスを崩して川に転落、ほかの3人でコントロールしようとしたが、岩にぶつかって転覆したと説明。その間、十数秒だったという。

組合は28日、船頭を含む全員が救命具を着用していたと説明したが、亡くなった船頭の田中三郎さん(51)は発見時、ベルト型の救命具を着用しておらず、川に落ちた後に外れたか、身に着けていなかった可能性がある。

運輸安全委員会の船舶事故調査官2人は29日、現地を訪れ、転覆した舟を調べたり、関係者から事情を聴いたりした。

事故は28日午前11時ごろ発生。乗客25人と船頭4人の計29人全員が川に落ちた。乗客25人と船頭2人は救助された。京都府警や消防は29日も、行方不明となっている船頭の男性(40)の捜索を続けた。

会見した豊田知八(ともや)代表理事は「お客さまに怖い思いをさせて申し訳ない。なぜ事故が起きたのかしっかりと検証する」と陳謝した。

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