中古車売買トラブル増加 強引な契約やキャンセル妨害 関係団体「実物確認して購入を」

渋滞する高速道路=平成28年1月2日、兵庫県西宮市
渋滞する高速道路=平成28年1月2日、兵庫県西宮市

中古自動車の売買をめぐるトラブルが増加している。国民生活センターでは、中古車の売却に関する相談が増加。強引な契約やキャンセル妨害などに関する相談が相次いでいるという。中古車の販売については、店舗やネット販売のほか、フリマアプリやオークションサイトでの個人売買など多様化するなか、車を実際に確認せずに購入したケースでのトラブルも相次いでおり、関係団体が注意を呼びかけている。

国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた中古車の売却に関する相談は2021年度は前年度比25%増の1519件で、22年度も増加傾向にあるという。

(出典元:国民生活センター)
(出典元:国民生活センター)

担当者は、中古車の売却トラブルが増加している背景について、半導体不足や新型コロナウイルスの影響による新車販売台数の減少から、新車に買い替える消費者が減り、 中古車の登録台数が減少。販売価格も上昇したことから、事業者が中古車の買い取りに一層力を入れたことが一因になっていると指摘する。

オートオークション大手、ユー・エス・エス(USS)が発表した22年3月期の中古車の平均落札価格をみると、前年比18・4%増の90万9000円となり、昨年9月に前年比32・3%増の122万1000円に高騰。半導体不足などが改善傾向にあり、今年2月には前年比0・4%減となったものの、100万2000円と100万円を超えた水準にある。

消費生活センターには、「査定時に強引に契約させられた」「高額なキャンセル料を提示された」といった強引な勧誘やキャンセル妨害などに関する相談が寄せられているといい、売却価格の20%となる約40万円のキャンセル料を請求されたケースもあったという。

担当者は、「『今日なら高く買い取る』などと、契約を急がせることが多いので、冷静に検討してほしい」と訴えている。

個人売買のトラブルも

中古車の販売は、自動車メーカーの直営や特約店契約を結んだディーラー、特定のメーカーと販売契約を結ばず、基本的にディーラーから販売する車を仕入れるサブディーラー、オートオークションや買い取りで車を仕入れる販売店がある。中古車販売を営むためには、古物商の資格が必要となる。

中古車の価格高騰で、こうした事業者の実店舗での販売やネット販売のほか、メルカリなどのフリマアプリやヤフーオークションなどのオークションサイトでの売買も注目を集めるようになっているが、個人間取引によるトラブルも起きている。

日本中古自動車販売協会連合会の担当者によると、フリマアプリなどによる個人間取引の場合、消費者を保護するルールを定めた消費者契約法の対象外となり、トラブルになった場合は、基本的に当事者間で解決する必要があるという。

ただ、民法には、契約内容と異なるものを引き渡した場合、その責任を負わなければいけないとする「契約不適合責任」があり、契約内容に適合しない引き渡しがあった場合、買主は売主に対し、契約解除や修理の請求、代金の減額、損害賠償などを行う権利がある。契約不適合責任を問うには、購入者は不具合に気が付いてから1年以内に販売店に通知する必要がある。

担当者によると、「売る側と買う側の意思疎通ができておらず、購入直後にトラブルが起きることも多い。例えば『小さな傷』というのも捉え方が異なり、現物を見ない取引では、注意が必要」と指摘する。

「実際に車を確認して購入を」

自動車取引業者で構成する自動車公正取引協議会にも、実際に車を確認せずに購入した消費者から車両の品質に関するトラブルの相談が寄せられている。

担当者は、中古車はそれぞれ品質などが異なるため、実際に車を確認して試乗などを行い、車両の品質を確認することが重要だと強調。車検証や点検メンテナンスノート(整備記録簿)などを確認した上で、「見積書を作成してもらい、価格や保証、整備の有無などの契約内容を確認し、納得した上で契約することが重要」と指摘する。

ほかにも、安価な車両価格を表示しながら有償保証やオプションの購入を条件にしたり、不必要な諸費用を請求させたりするトラブルの相談も寄せられているという。

こうした問題を受け、同協議会は中古車価格の表示ルールを見直し、今年10月から会員の販売店に対し、「支払総額」表示を義務化する。

車体価格に加え、保険料や税金、登録などに伴う費用を含めた総額表示となり、表示価格で実際に購入できない場合は、「不当表示」として違反事業者に対して厳正に対処する方針だ。

担当者は、「総額表示は消費者にとっては大きなメリットになる。すでに多くの販売店で総額表示に切り替えており、販売店選びの参考にもしてほしい」としている。(本江希望)

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