プロ野球のレギュラーシーズンが31日から本格的に始動する(30日に日本ハム-楽天のみ開催)。野球の「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)で日本代表が3大会ぶりに優勝を果たし、国内各地でも盛り上がりを見せる中、プロ野球の西武が地上波テレビ向けのCM放映を展開している。「家族で野球を観戦する楽しさを感じていただきたいという思いから放映を決定した」という今回のCMに、会員制交流サイト(SNS)でも「幼いころを思い出した」といった声が寄せられている。
WBCの準決勝、決勝戦でも放映
17日からテレビ朝日、TBS(関東地方のみ)で放映されている約30秒間のCMは、西武の本拠地・ベルーナドーム(埼玉県所沢市)に訪れた娘が、父親に語りかける場面から始まる。
娘「(電光掲示板に映し出された松井監督を見ながら)あれ、監督?」
父「そう。すごかったんだぞ、稼頭央(松井監督)は。足は速いわ、ホームランは打つわ、守備はかっこいいわ…」
娘「〝推し〟だったんだ?」
父「推しなんてもんじゃないな」
CMでは会話の後、山川穂高選手が本塁打を打った後に披露する「どすこいパフォーマンス」を親子で一緒に行い、観戦を楽しむ様子が描かれている。
CMの放映がスタートすると、ツイッターでは「幼いころを思い出した」「ちょっと泣けた」といった好意的な声が寄せられた。CMの反響について、球団では「『CM内の父親がまさに自分と境遇が同じで、初めて娘をベルーナドームに連れて行くことに決めました』といったお話もいただいた」という。
CMは、WBCの準決勝、決勝を生中継した番組内でも放映された。球団では「WBCの開幕前から野球への関心が高まりつつあることは認識していた」とした上で、「そのタイミングでCMを放映することにより、多くの皆さまに野球観戦を想起いただくチャンスだと考えた」と説明する。
家族のコミュニケーションが増える体験を提供
球団によると、2007年にもCMを放映したことがあるが、2週間にわたって放映するのは初めてだという。プロ野球の球団として異例のCM放映に踏み切った背景には、新型コロナウイルス禍によってここ数年にわたり伸び悩んだ観客入場者数がある。
日本野球機構(NPB)がまとめた統計によると、西武の過去3年間の観客入場者数は2020年=30万120人▽21年=62万346人▽22年=121万2233人。感染拡大の影響で20年と21年の2年間は入場者数に制限を設けていたこともあり、コロナ禍の影響がもろに直撃した。
ただ、今季は開幕当初から声出しや鳴り物での応援が解禁。徐々にではあるが、野球界もコロナ禍前の様相に戻りつつある。
今回のCMについて、球団は「子供と一緒に出かける時期には限りがあるからこそ、その貴重な時間の中で家族のコミュニケーションが増えるきっかけになるような体験を提供したい、という思いを込めた」と説明している。
CMは31日まで放映される。(浅野英介)