岸田文雄首相のウクライナ電撃訪問と中国の習近平国家主席のロシア訪問は、アジアの2大国が期せずしてそれぞれの国際秩序観を世界に示す機会となった。結果は日本が巧みな外交をみせ、中国が失点したといえるだろう。戦後初の日本の首相の戦地訪問は、21世紀の国際秩序の方向を規定する歴史的な意義を持つ可能性がある。
岸田氏の21日のウクライナ入りは日本外交の大転換点だ。日本は戦後、憲法9条の制約を理由に日本が当事国でない戦争には巻き込まれないよう目を閉ざし、関与しないことを方針とした。だが、岸田氏は日本の外で起きた戦争でも、平和の回復に向けて積極的な役割を担う決意を示した。
先進7カ国(G7)議長国としての強い使命感があったのだろう。欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、ウクライナ戦争は国際秩序の将来を巡る戦いだと、指導者として最初に訴えたメッセージを行動によっても発信した。