馬英九氏、孫文の墓参拝「中華民国」「前総統」と自称

【台北=矢板明夫】中国を訪問している台湾の最大野党、中国国民党に所属する馬英九前総統は28日、南京で国民党の創設者、孫文の墓「中山陵」を参拝した。その後、「平和を追求し戦争を避け、中華の振興に尽力することは、両岸(中台)の中国人にとって避けてはならない責任だ」などとする談話を発表した。

参拝した際、中国側が用意した花には「中国国民党馬英九元主席」と党の肩書が付けられていたが、馬氏は談話の中で「中華民国」の「前総統」と自称した。中華民国は1912年に孫文らが創建した国で、今も台湾が公式に使用している名前だ。しかし、中国は「49年の中華人民共和国の成立と同時に、中華民国は消滅した」と主張しており、その存在を認めていない。馬氏は談話の中であえて中華民国に言及し、今回の訪中に反対する台湾の世論へ一定の配慮を見せたといえる。

台湾メディアによると、中国側は馬氏に同行する台湾メディアに対し、馬氏に質問する際には前総統などの肩書を付けず、単に「馬さん」と呼ぶように求めたという。また中国側は馬氏の参拝に当たり、一般民衆が馬氏一行と直接接触できないように墓の周辺に多くの警察官らを配置した。

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