河野氏「台湾有事非常に危険」 群馬「正論」懇話会詳報

「台湾有事」の可能性と日本の対応ついて語る河野氏=前橋市の前橋商工会議所会館
「台湾有事」の可能性と日本の対応ついて語る河野氏=前橋市の前橋商工会議所会館

前橋市の商工会議所会館で22日、開かれた群馬「正論」懇話会第61回講演会。第5代統合幕僚長の河野克俊氏は「台湾有事のリアル」と題した講演を行い、「来年1月の台湾の総統選の結果次第で中国が武力行使に踏み出す恐れが強い」とし、日本は「安保3文書」に沿って早急に防衛力を整え、米国と協力し抑止力を高めるべきだと主張した。

河野氏は台湾有事について、世界2位の経済力を手にした中国が海洋進出に踏み出した結果、顕在化した米中対立の中で起こっている問題と位置づけた。中国は日本の南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」の内側を「絶対に守るべきバッファ領域」と想定。「域内の南シナ海、香港は既に抑え、残るは台湾と尖閣諸島だ。悠長に構えていられない」

一方で中国は戦わずして勝つ戦略を最上と見て、台湾の総統選で親中派政権誕生を狙う工作に全力を挙げるだろうと予測。しかし思惑通りに行かなかった場合、中国の習近平指導部が3期目の任期満了を迎える2027年までの3年間は「非常に危険な期間となる」とした。

武力衝突が早まる見通しは米軍幹部からも複数あると指摘し、河野氏は日本の関わりに言及。1982年のフォークランド紛争で、英国が同島に上陸するために事前攻撃によって周辺の制海権と制空権を確保した経緯を説明。中国も同様に激しい攻撃を加えるはずで「台湾からわずか110キロの日本が影響を受けないとは考えられない」と日本有事は避けられないとした。

「日本は米国と抑止力を高め、中国に武力行使を断念させることが大事だ」と訴えた。さらに安保3文書で継承された専守防衛について「必要最小限の対応」とされた点に言及。「先に手を出す必要はないが、やられたらやり返す。しかも日本国民を守るために全力で立ち向かう姿勢でなければ、抑止力にならない」として「必要最小限」は不要と指摘すると、会場から拍手が湧き起こった。

河野克俊氏、台湾有事「日米で抑止力、喫緊の課題」

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