【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の朝鮮中央通信は28日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が27日に「核の兵器化事業」を指導したと報じた。金氏は「兵器級の核物質の生産を拡大し、威力ある核兵器の生産に拍車をかけなければならない」と核兵器研究所などに指示した。
金氏が同研究所が開発した戦術核弾頭「火山(ファサン)31」を視察する写真も公開した。北朝鮮がこの戦術核弾頭を公開するのは初めて。弾頭の直径は40~50センチと推定され、日韓を標的にする戦術ミサイルに搭載できるよう一定程度小型化したと韓国の専門家は分析している。
米韓が大規模な合同軍事演習を実施し、米原子力空母を韓国に展開させるなど目に見える形で抑止力強化を示す中、韓国や在日米軍を狙う戦術核兵器の実戦配備が迫る状況を誇示して対抗する思惑とみられる。
北朝鮮が軍事的示威を一層活発化させるとともに、核弾頭の小型化を確実にするため、7回目の核実験を強行する事態が懸念される。
金氏は「いつ、どこでも核兵器を使えるように完璧な準備」を指示。それでこそ、核抑止が機能する点を強調した。核兵器研究所から核の生産実態の報告を受け、核反撃作戦計画や命令書を検討したともしている。
朝鮮中央通信は、核攻撃を想定して平壌郊外から地対地戦術弾道ミサイル2発を27日に発射し、北東部、金策(キムチェク)沖の島の上空500メートルで弾頭を爆発させる訓練を行ったとも報じた。27日に発射した短距離弾道ミサイル2発を指すもようだ。
25~27日には国防科学院が水中戦略兵器システムの実験を行ったと伝えた。21~23日にも実施した核魚雷を遠隔操作する「核無人水中攻撃艇」の実験を指すが、韓国軍は、開発の初期段階に過ぎず、北朝鮮が性能を誇張していると分析している。