【台北=矢板明夫】台湾の最大野党、中国国民党に所属する馬英九前総統が27日、「先祖を供養するため」として中国を訪問した。総統経験者の訪中は初めて。馬氏は出発前、空港で記者団に「両岸の関係改善を期待している」とのメッセージを発表した。今回の訪中は、中国の妨害により中米のホンジュラスと台湾の外交関係が解消された直後。それだけに台湾の与党、民主進歩党の関係者からは「馬氏は中国に利用されている」「行くべきではない」などと批判する声が上がっている。
中国共産党幹部らと会談
台湾メディアによると、馬氏は今回、上海、南京、武漢、長沙、重慶などを訪れる。国民党の創設者、孫文や辛亥革命(1911年)の記念施設を訪れる予定だ。中国共産党の最高指導部で序列4位の王滬寧・全国政治協商会議主席や、中国で対台湾政策を主管する国務院(政府)台湾事務弁公室のトップ、宋濤氏らとも会談するという。
中国では昨年秋の共産党大会で、習近平氏の3期目指導部が発足した。新執行部メンバーと馬氏の会談が実現すれば、中国が国民党との関係を重視するとの意思の表れとなる。来年1月に控える台湾の総統選に影響を与える可能性もある。
香港メディアなどが伝えた馬氏の訪問先の中には、「南京大虐殺記念館」や重慶の抗日戦争を記念する施設、日中戦争中に戦死した将軍、張自忠氏の墓地などが含まれている。台湾の政治評論家、黄澎孝氏は「滞在期間が一週間余りしかないのに、これだけの反日施設を回るのは異常だ。日台分断を狙う中国側が日程を決めた可能性が高い」と分析している。