新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられるのに伴い、政府が医療提供の方向性をまとめた。
新型コロナ対応を特別な医療から日常の医療に転換し、対応できる医療機関を拡大していくことが柱となる。
大病院に頼っていた対応の軸足を中小の病院や診療所に移す。入院は全国に約8200ある全ての病院に、外来は季節性インフルエンザと同じ約6万4千の診療所などに広げる。機動的に進めなければいけない。
方向性は正しい。患者には高齢者が多く、慢性疾患の悪化で入院が長期化することも多い。高度な医療を行う大病院より、介護職やリハビリ職が多く、在宅復帰支援の得意な中小病院での治療や療養が、退院後の生活にも資する。
大切なのは、これまで受け入れが十分でなかった中小病院や診療所にどう患者を受け入れてもらうかだ。政府には実現の道筋を明確にしてもらいたい。
カギは、都道府県が4月中に策定する「移行計画」である。第8波のピークを念頭に、域内の患者受け入れ数を把握する。行政は個々の医療機関と交渉して受け入れ拡大を図り、どこがどんな医療を提供するか具体化し、計画の実効性を高めなければいけない。高齢者施設との連携も必要である。
これまでコロナ治療に当たっていなかった医療機関にも対応を促す以上、動線確保の方策や感染症対応の指導は欠かせない。
医師にはコロナ感染や疑いのみで診療を拒否できない「応召義務」があることも明確化する。不退転で取り組むべきだ。
コロナ対応の特例として上積みされた診療報酬や病床確保料は撤廃も視野に段階的に縮小する。だが、令和5年度はコロナの動向も態勢構築も流動的だ。流行の波が来たら特例措置を復活する臨機応変な対応も必要である。
6年度施行の改正感染症法では、都道府県と医療機関が平時から入院や発熱外来、訪問診療などの協定を結ぶ。移行計画はその下地になろう。
6年度の診療報酬と介護報酬の同時改定には感染症対応も盛り込まれる。
患者のため、身を粉にする医療機関に報いる報酬改定にしていくべきだ。