中国が狙う南太平洋への影響力拡大は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を揺さぶる動きである。
林芳正外相が南太平洋のソロモン諸島とクック諸島両国を訪問した。
ソロモン諸島は、チャールズ英国王を元首とする英連邦の加盟国で米ハワイとオーストラリアの間に位置する。首都ホニアラは先の大戦で日米の激戦地となったガダルカナル島にある。
林氏はソガバレ首相、マネレ外務・貿易相と会談し、ソロモン諸島が昨年4月に中国と締結した安全保障協定について「注視している」と述べた。中国の影響力拡大への懸念を伝えたものだ。
安保協定は、中国軍のソロモン諸島への駐留や艦船寄港などを可能とする。中国が南太平洋諸国に軍事的な拠点を構築すれば、地域の安全保障に重大な影響を与える恐れがある。
協定の締結当時、日米豪などは強い懸念を表明した。今回の林氏訪問は、中国に傾斜するソロモンにクギを刺す狙いがある。
見過ごせないのは、林氏がソロモンを離れた直後の21日、ソロモン政府がホニアラの国際港など総額約1億7100万ドル(約225億円)の改修事業を中国の国有企業に発注したという発表だ。
中国が、日本などの動きを意識してインフラ整備支援などで巻き返しに出る可能性がある。
林氏は、クック諸島のブラウン首相に5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の拡大会合に招待する意向を伝えた。クック諸島は太平洋の18カ国・地域で構成する地域協力機構「太平洋諸島フォーラム」の議長国だ。
南太平洋島嶼(とうしょ)国では、中国との緊密な関係を見直す動きも出始めている。ミクロネシア連邦は中国と断交し、台湾との外交関係樹立を模索している。ミクロネシア連邦の政府高官に、中国が賄賂を贈るなど異常な接近をはかっていた疑惑が出ているためだ。
フィジーも中国と締結していた両国警察間の協力協定の停止を表明している。
中国との協力が、主権を脅かしかねない事態を招くのではないかとの危惧があるようだ。
日本は米国やオーストラリアなど地域の国々をはじめ、南太平洋に領土を持つ英仏両国とも連携し、中国の覇権的な進出を阻止していかなければならない。