刑事裁判は誰の、何のためのものなのか。罪を犯した被告の制裁と更生機会の提供、あるいは被害者側の処罰感情反映の場といえそうだが、広くとらえれば「よりよき社会のため」であるべきだろう。
だが、必ずしもそうとは思えない判決に行き当たることがある。福島県三春町で令和2年、刑務所に戻ろうと考え面識のない男女2人をトラックではねて殺害したとして、殺人や道交法違反(ひき逃げ)などの罪に問われた盛藤吉高被告の控訴審判決で、仙台高裁は2月16日、死刑とした1審福島地裁郡山支部判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。事件の経緯などを振り返り、2審が社会に寄与する判決だったのかどうか考えてみたい。
1審、2審判決などを総合すると、事実関係はおおむね次の通りだ。