【北京=三塚聖平】北京市でアステラス製薬の現地法人幹部の日本人男性が拘束された事件について、中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は27日の記者会見で、「(男性は)スパイ活動に従事し、中国の反スパイ法などに違反した疑いがある」と拘束理由を説明した。男性が拘束された経緯は不明。北京の在中国日本大使館は、早期解放に向けて中国側への働きかけに全力を挙げている。
日中外交筋は同日、この邦人拘束について「日中関係の基礎である経済関係や人的往来にきわめて深刻かつ計り知れない影響を与え得る」と深い懸念を表明した。
関係者によると、拘束されたのはアステラス製薬で現地法人幹部を務める50代男性で、3月に駐在期間を終えて日本に帰国予定だった。帰国直前に北京市の国家安全局に拘束されたとみられる。中国に進出する日系企業の団体「中国日本商会」の幹部を務めたこともあるベテラン駐在員で、日系企業関係者には「誰でも拘束される可能性がある」と衝撃が広がっている。
習近平政権は2014年に反スパイ法を施行するなど中国で活動する外国人の取り締まりを強化している。中国ではスパイ容疑などによる日本人拘束が続いており、15年以降に今回のケースを含めて少なくとも計17人にのぼる。