文化・芸術行政を担う文化庁は27日、京都市に移転し業務を始めた。明治以来初の中央省庁の地方移転で、東京一極集中を是正し、政府がめざす「地方創生」の一環。都倉俊一長官ら約70人体制でスタートし、5月15日までに全体の約7割にあたる約390人が京都を拠点に本格稼働する。
午前8時半過ぎ、京都市上京区の新庁舎で「文化庁」の銘板の除幕式が行われた後、新生文化庁がスタート。業務開始に際し、岸田文雄首相と永岡桂子文部科学相が東京からテレビ会議システムを使って訓示。岸田首相は「新たな文化政策の大きな契機となる。日本全国の文化発展に期待している」と述べた。都倉長官も幹部らを前に「有形無形の文化財を原動力として日本文化を世界に展開してほしい」と訓示し、長官室で執務についた。
文化庁の京都移転は平成28年に政府が方針を決定。京都には全9課のうち文化財保存などを担う5課が移り、東京は著作権課など4課の約200人が残る。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の対応などに追われる宗務課は当面、東京に残留する。また、移転を機に、長官を補佐する「長官戦略室」のほか、食文化と文化観光を担う推進本部をそれぞれ京都に新設した。
「文化首都」を掲げる京都の地の利を生かし、地方目線を取り入れた新たな文化行政が期待される。一方で、国会対応や予算折衝などで職員は頻繁に東京と京都を行き来せざるを得ず、課題は多い。京都や関西のみならず全国に波及するような移転効果を創出できるか。災害リスクも視野に、省庁移転の先行例としてその成果が問われる。