大相撲春場所千秋楽は26日、エディオンアリーナ大阪で行われ、新関脇霧馬山が12勝3敗による優勝決定戦で小結大栄翔を突き落とし、初優勝を果たした。
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物言いが付く際どい相撲の末に初優勝が決まると、霧馬山は感無量の面持ちで天を仰いだ。「最高でした。どこにいるか分からないくらいになっていた」。入門した8年前に描いた最初の夢を、モンゴル出身の26歳がかなえた。
星の差1つで追う大栄翔を本割、優勝決定戦と立て続けに破った。「最初の相撲はすごく緊張があった。2番目は『ここでやってやるぞ』という気持ちだった」。2番とも土俵際まで押し込まれたものの、豊富な稽古で鍛えた足腰を生かして突き落とし。新関脇として横綱大関不在の場所を締めくくる見事な逆転劇だった。
モンゴル最東部のドルノドゥ県で、羊などを飼っている遊牧民の一家に生まれた。10代のころはモンゴル相撲や柔道に親しみ、日本で力士になるテストを受けて陸奥部屋に入門。当時は体重100キロにも満たない痩身(そうしん)で、テストを受けた中にはもっと体格のいい子もいたが、陸奥親方(元大関霧島)が、その真面目な性格とセンスを評価して受け入れを決めたという。
豊昇龍とはモンゴルで同じ柔道クラブに所属していたことがあり、同じ時津風一門の若元春、若隆景の兄弟とは頻繁に稽古を共にする。大関昇進を争う身近なライバルたちに、この優勝で一歩リードした格好だ。
来場所は、いよいよ大関取り。三役で直近3場所合計33勝とされる昇進の目安まで、あと10勝だ。「15日間、一日一番しっかり頑張ります」。もう一つの夢をつかみに行く。(宝田将志)