文化・芸術の継承や発展の施策を担う文化庁が27日、京都市に移転し業務を開始する。中央省庁の地方移転は明治以来初。26日には市内で岸田文雄首相ら政府や地元関係者が出席した「祝賀の集い」が開かれ、京都・関西の視点を取り入れた文化施策の取り組みや地方の活力向上に期待が高まっている。
岸田首相は祝辞で「政府として移転を機に、京都から新たな文化振興に取り組んでいきたい」とあいさつした。都倉俊一・文化庁長官は「古来からの文化財の維持・継承と、世界への新たな文化の発信が新文化庁の大きな役目」と述べた。式典では鏡開きなども行われ、新たな門出を祝った。
文化庁移転は、地方創生の目玉施策として安倍晋三政権が平成26年に掲げた中央省庁の地方移転の募集に京都府などが誘致を求めて実現。政府や地元自治体でつくる協議会は、移転の意義として、東京一極集中の是正や京都・関西の先進的な知見やノウハウを生かした施策の立案などにつながるとしている。
当初は令和3年度中の移転を目指したが、新庁舎の工事が長引き、4年度末の27日に都倉長官ら約70人で業務を開始。5月15日までに全体の約7割にあたる390人体制(非常勤を含む)となり、残る約200人は東京で業務を続ける。
京都には長官直轄の戦略室や食文化などの推進本部を新設するほか、全9課のうち文化財保存などを担う5課が移転する。
ただ、宗教法人を所轄する宗務課は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題に対応するため当面、東京に残留する。
国会対応や予算折衝などで日常的に議員や他省庁との関わりが必要とされる中央省庁の運営が地方を拠点にスムーズにいくのか、文化庁の成功の是非が第2、第3の省庁移転実現の機運をうらなうことになる。