自衛隊のワクチン大規模接種会場終了 感染拡大防止から「重症」回避へ

自衛隊が東京と大阪で運営してきた新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場が25日、接種人数の減少などに伴い活動を終了。一方、国は新年度もワクチンの無料接種を継続する。感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げられる5月8日以降も、5歳以上は年1回、高齢者らには年2回の機会が設けられる。専門家は、高齢者らにとって「リスクが高い感染症」であることは変わらないとし、接種の必要性を訴える。

厚生労働省によると、令和5年度のワクチン接種は9~12月、5歳以上の希望者全てが対象。重症化予防の効果などが最大1年程度持続するとの報告があり、従来より接種間隔をあけた「年1回」との頻度を定めた。この時期の接種が浸透している季節性インフルワクチンとの同時接種も念頭に、医療機関などへ足を運ぶ回数を減らすことで接種を促す側面もある。

65歳以上の高齢者や基礎疾患があるなど重症化リスクの高い人、そうした人と触れ合う医療・介護従事者らには、5~8月にも接種時期を設定。「年2回」を可能とした。

使用されるのはオミクロン株対応のもので、対象者は5類移行当日の5月8日から接種が開始される。9月以降分は感染状況や流行株などに応じ、今後判断する。予防接種法上の「特例臨時接種」は1年延長し、接種時期を問わず、5年度は現状の無料接種が続く。

従来と同様、接種には「接種券」が必要だが、配布方法は自治体ごとの判断になる。

25日で終了となる自衛隊の新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場に向かう男性=25日午後3時3分、東京都千代田区(鴨川一也撮影)
25日で終了となる自衛隊の新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場に向かう男性=25日午後3時3分、東京都千代田区(鴨川一也撮影)

厚労省などによると、5~8月接種では、対象者のうち、基礎疾患がある人には事前に申請してもらい、65歳以上には申請なしで接種券を配布する方法が想定されている。基礎疾患の有無は自治体側で正確な把握が難しいためで、実際にこの形を採用した自治体もある。配布漏れを防ぐため、いったん全世帯へ配布し、接種条件を記した書面を同封するなどして自分が対象者かどうか判断してもらう形式も見込まれるという。

9月以降の希望者全員を対象にした接種は、人口規模などにより、一律で事前申請の方式を取る自治体が出てくる可能性がある。

一方、新たなワクチン接種に向けた国民の意識は割れている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が今月実施した合同世論調査では、今後のワクチン接種について「する」(49・2%)と「しない」(47・0%)でほぼ二分された。男性は70歳以上で約7割が接種するとした一方、30代は3割程度。女性も70歳以上は6割超が接種すると回答したが、30代は約4割にとどまるなど、年代で差がみられた。

全国のワクチン接種率(3回目)も、今月24日公表時点で65歳以上は91%超だが、全体では約68%まで落ち込む。副反応への忌避感などを背景に、若者世代が低調に推移しているとみられる。

順天堂大大学院の堀賢教授(感染制御科学)は「コロナの致死率や重症化率が全体として低下している中で、ワクチン接種の主眼は、感染拡大抑止から、できるだけ重症者を出さないようにするというフェーズに移った」と指摘。今後、変異などで病原性が高くなる可能性は残るものの、現状は「国民に広く一律に接種を進める必要性は低い」との認識を示した上で、「コロナが高齢者や基礎疾患のある人たちにとって、まだリスクの高い感染症であることは事実。必要な人へワクチンがしっかりと届く態勢の構築が、この1年は大事になる」とした。(中村翔樹)

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