「出てこいや、こら」警官発砲で男死亡、緊迫の立てこもり現場

刃物を持って立てこもった容疑者の部屋の隣室のベランダから説得にあたる警察官=大阪府和泉市(近隣住民提供)
刃物を持って立てこもった容疑者の部屋の隣室のベランダから説得にあたる警察官=大阪府和泉市(近隣住民提供)

「出てこいや、こら」。住宅街に警察官の大声が響いた。路上には頭から血を流して座り込んでいる男性。すぐそばで別の男性もぐったりとして倒れていた。「刃物刃物。至急応援ください」。警察の無線が流れる。続々とサイレンを鳴らしながらパトカーが集まり、警察官十数人が盾や警棒を持って集合住宅内に入っていった。

 24日午後7時10分ごろ、大阪府和泉市箕形(みがた)町の集合住宅で、男性から「母親が息子に殺されると電話をかけてきた」と110番があった。大阪府警和泉署員が駆けつけると、集合住宅前で男女3人が負傷しており、住人の男が2階の一室に立てこもった。玄関の扉をこじ開けると、男が刃物を振り回して向かってきたため、男性警部補(40)が警告した後に拳銃を1発発砲。男の右胸付近に命中し、搬送先の病院で死亡が確認された。

 同署は男を殺人未遂と公務執行妨害容疑で現行犯逮捕し、搬送のため釈放した。同署によると、男は部屋の住人で無職、佐々木祐容疑者(39)。負傷したのは佐々木容疑者の母親(70)と、この集合住宅の別の部屋に住む男性2人。母親は「息子に鉄パイプで殴られた」と話している。

 男性2人は切りつけられたとみられる。いずれも病院に搬送され、52歳の男性が首を切られて重傷、26歳男性と母親が軽傷を負った。命に別条はないという。同署が詳しい状況を調べている。

■刃物を持ち仁王立ちに

「ただ事ではない」。24日午後7時過ぎ、近くの男性(20)は帰宅途中に現場の集合住宅の前を通りかかり、緊迫した光景を目にした。容疑者が立てこもっている2階の部屋の隣の部屋のベランダから警察官が身を乗り出し、警棒で柵をたたきながら怒鳴っていたという。

大阪府警和泉署によると、現場に到着した署員の姿をみた佐々木祐容疑者は集合住宅2階の自室に逃げ、チェーンをかけて立てこもった。

「出てきなさい」「話を聞かせてくれ」。玄関先では防刃手袋や盾、さすまたを構えた署員3人が大声で説得を続けた。逃走に備え、ベランダ側の路上でも署員数人が警戒に回ったが、一向に応じない。

立てこもって約30分後、署員がチェーンを工具で壊して玄関扉をこじ開けると、佐々木容疑者は2メートル離れた先に刃物を持って仁王立ちに。

「刃物を捨てろ」「捨てなければ撃つぞ」。署員が警告したが、刃物を持って襲いかかってきたため、同署地域課の男性警部補(40)が1発発砲。佐々木容疑者は倒れた。

近くに住む50代女性は「怒鳴り声が聞こえたと思ったら、パンと音がした。巻き込まれていたと思うと本当に怖い」。近くの男性は「1発発砲音が鳴り、『医療バッグ持ってこい』という救急隊員の声が聞こえた。怖かった」と声を震わせた。

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