自衛隊が東京と大阪で運営してきた新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場が25日、活動を終了した。ただ、国産ワクチンはいまだ実用化に至っておらず、周回遅れとも揶揄(やゆ)されている。それでも複数の日本企業が、定期接種への活用などを想定し、今も開発を進めている。
塩野義製薬は昨年11月、組み換えタンパクワクチンについて厚生労働省に承認申請した。すでに広く接種されているメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとは製法が異なり、承認されればアレルギーなどの問題で打てなかった人の選択肢となり得ることが期待されている。手代木功社長は「今後、定期接種ということになれば、存在意義がある」と訴えてきた。
第一三共は今年1月、mRNAワクチンを承認申請した。既存の米2社のmRNAワクチンが冷凍保存を原則必要とするのに対し、2~8度で保温できることを特色にする。
一方、開発中止や撤退を決めた企業もある。アンジェスは臨床試験を進めていたワクチンについて十分な効果が確認できず、令和4年9月に開発中止を発表。田辺三菱製薬も今年2月、新型コロナワクチン事業からの撤退を発表した。カナダで承認を得ていたが、大量生産化に課題があり、ほかのワクチンが広く普及していることも影響した。
コロナワクチンを巡る環境はこの2年で大きく変化したが、今、国産ワクチンを実用化しておけば、技術を応用して次のパンデミック(世界的大流行)で開発期間を短縮できる可能性もある。不活化ワクチンで4月以降の承認申請を目指すKMバイオロジクスの永里敏秋社長は「国民の皆さまに新たな選択肢を提供したい」と話している。(牛島要平)