3月に漁が解禁された地方の水産物が不漁に陥っている。富山湾に春の訪れを告げるホタルイカの漁獲量は記録的な低迷にあえぎ、関西では資源の保護を優先して大阪湾や播磨灘のイカナゴのシンコ(稚魚)漁を早々に終漁した。旬の魚以外でも太平洋のマサバは漁獲量の減少が著しく、食卓にのぼるサバ缶の値上げにつながっている。一方でマイワシは豊漁で、それがホタルイカの不漁の要因になっているとの指摘もある。
「取れたてで新鮮とはいえ、10匹で900円は高すぎる。例年なら300円ほどで買えるのに…」。富山市に住む70代の女性は、市内のスーパーで売られていたホタルイカの価格を見て買うのをあきらめた。
今月1日に富山湾で解禁されたホタルイカの定置網漁は初日の水揚げ量はわずか59匹で、記録が残る平成20年以降で最少だった。この59匹は1万1000円で落札され、例年の取引額(1キロ当たり約4000円)に比べて単価は約4倍に跳ね上がった。
今月中旬になって、ようやく1000キロ以上の水揚げが確認されたが、それでも例年よりは大幅に少ない。富山県水産研究所は「資源量そのものが減っているのか、富山湾への回遊が遅れているのかは現時点で特定できない」と説明する。
大阪湾と兵庫県南西部の播磨灘で4日に解禁されたイカナゴ漁も芳しくない。兵庫県水産技術センターによると、解禁日の水揚げ量は前年に比べて約2割少なく、資源保護のために大阪湾では8日に、播磨灘では17日に終漁となり、最盛期に1カ月近く続いていた漁は早々に打ち切られた。兵庫県内で6年前に1万トンあった水揚げ量は2000トンを割り込んだ。同センターは「海の水質改善に努めた結果、きれいになりすぎてエサのプランクトンが減少したことも不漁の原因の一つだ」と分析する。
一方で豊漁なのがマイワシだ。水産関係者に情報を提供する漁業情報サービスセンター(東京)によると、昨年1~11月のマイワシの水揚げ量は58万3000トンで前年同期を2万7000トン上回り、この5年間で4割近くも急増した。
マイワシは10~20年周期で豊漁と不漁を繰り返すが、そのメカニズムは解明されていない。ただ、最近になって温暖化による海水温の上昇が原因の一つと考えられている。同センターは「今シーズンは三陸沖から茨城沖にかけて海水温がかなり上昇している。マサバが冷たい海水を求め深い水域に潜り、これまでマサバがいた水域でマイワシが取れている」と話す。
その結果、サバが100メートル以上も潜ってしまい、その水深では巻き網漁が対応できず、サバの不漁につながった。さらに、マイワシの豊漁で「ホタルイカの定置網漁にマイワシが入り込み、ホタルイカの入網が減った可能性もある」(富山県水産研究所)という。