主張

公示地価 コロナ禍の反動に警戒を

国土交通省がまとめた今年1月1日時点の公示地価によると、商業地と住宅地、工業地を合わせた全用途の平均は前年より1・6%値上がりし、2年連続で上昇した。

新型コロナウイルスの影響で落ち込んでいた社会経済活動が正常化に向かい、商店や住宅などの需要が持ち直したことで地価の回復につながった。

こうした地価の上昇は都心部だけではなく、地方の一部にも波及している。とくに再開発が進む地方では地価が大きく値上がりする傾向がみられる。

実需に裏打ちされた地価の上昇なら経済の活性化なども期待できよう。だが、ミニバブルの懸念もある思惑先行の急激な値上がりは、実体経済に悪影響を与えかねない。コロナ禍の反動による地価動向には警戒が不可欠だ。

飲食やサービスなどの需要が本格的な回復を示す中で、全国の商業地平均は1・8%上昇した。国内の観光客はコロナ前の水準に戻りつつあるが、訪日客はまだ回復には至っていない。それでも主要な観光地の地価は需要回復を見込んで値上がりをみせた。

住宅地平均も1・4%値上がりし、昨年より上昇率が0・9ポイント拡大した。コロナ禍による在宅勤務の拡大に伴い、一部の地価が下落した都市部でも上昇率が高まった。マンション価格の高騰なども影響しているという。

東京、大阪、名古屋の三大都市圏の全用途平均は、2・1%値上がりした。とくに札幌、仙台、広島、福岡の「地方4市」の上昇率は三大都市圏を大きく上回る8・5%に達した。再開発などの進展で人気が高まったためだが、バブルを招くような投機資金の流入を監視する必要がある。

地方4市を除く地方圏の住宅地も0・4%と28年ぶりに上昇に転じた。地方の人口減少は続いているが、周辺地域から県庁所在地などに移り住む人が増えているためだ。利便性を高めた「コンパクトシティー」の整備を進め、地方の活性化を図りたい。

全国工業地の上昇率も3・1%と32年ぶりの伸びとなった。コロナ禍の巣ごもり需要でインターネット通販の利用が拡大し、物流施設の建設が進んだのが要因だ。

景気の回復機運が高まる中で地価は上昇傾向にある。この動きを本格的なデフレ脱却につなげることが重要である。

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