福岡県のブランド茶「八女茶(やめちゃ)」の生産者や茶商関係者らでつくる八女伝統本玉露推進協議会(同県八女市)は24日、「八女伝統本玉露」を使った1本(500ミリリットル)2万5千円(税別)の高級ボトリングティーをお披露目した。関係者は「高級ワインと同じように飲んでもらえる味。日本茶に革新を起こすという思いで取り組んだ」と語り、海外での流通を目指す。
完成したのは玉露の甘味やうまみだけでなく、若干の渋みを感じさせる深い味わいの緑茶。初回100本を生産し、米国や香港、欧州のレストランでの取り扱いを目指す。同協議会の木屋康彦副会長は「世界のトップレストランで、ワインと同じように食事に寄り添うドリンクメニューとして採用されることをテーマとした」と説明した。玉露は本来、甘味やうまみを強く感じさせるが、食事とのバランスを考慮し、4品種をブレンドしてより広い味わいを感じられるようにしたという。
八女茶の中でも高級といわれる八女伝統本玉露の茶葉の価格は一般的に1キロ約5万円だが、今回は1キロ約30万円の茶葉を使用。価格は当初1本1万5千円前後を想定していたが、原価や生産者の収益を考慮して価格を設定。極めて低い温度の水で10時間ほどかけて抽出し、深い味わいを引き出している。
生産した100本は開発アドバイザーを務めたカナダ出身の世界的ソムリエ、フランソワ・シャルティエ氏の協力を得て、海外の高級レストランに紹介する。店では1杯4千円程度で飲んでもらうことを想定している。
同協議会によると、八女伝統本玉露の生産者は八女茶の生産者の5%にあたる約100人で、栽培面積も八女茶全体の0・9%しかない。今回選ばれたのは、その中でも最高峰の品種。茶畑を覆う素材にわらで編んだすまきを使ったり丁寧に手摘みをしたりするなど伝統的な方法で栽培されており、生産者は高度な技術と経験を持つ。
日本の緑茶は近年輸出が伸びており、安定した味の提供や、ワインと同等の流通が期待できるとしてボトリングティーを開発した。100本のうち10本は同協議会の公式サイトで販売する。5年後には国内外で約5千本の流通を目指す。
八女茶は明(中国)から帰国した栄林周瑞(えいりんしゅうずい)禅師が1423年に現在の八女市内でお茶の栽培を伝えたのが由来とされ、今年で発祥から600年の節目にあたる。品質は全国的に高く評価されるが、近年はペットボトル飲料の普及などで急須でお茶をいれる機会が減少し、生産者や生産量が減り続けている。
同協議会ではボトリングティーを起爆剤に改めて消費を喚起し、八女茶のブランドイメージ向上に努める。同協議会の江島一信会長は「お茶業界は大変な時期を迎えているが、努力を重ね、違った角度から戦略を立てることが大事だ」と述べた。また三田村統之・八女市長は「国内外の交流都市を中心に販路を広げ、八女茶をさらに発展させたい」と意気込んだ。(一居真由子)