大相撲春場所14日目は25日、エディオンアリーナ大阪で行われ、優勝争いは小結大栄翔と新関脇霧馬山に絞られた。千秋楽結びの一番で直接対決する。大栄翔は平幕翠富士を突き倒し、12勝2敗で単独首位。霧馬山は関脇若隆景の休場による不戦勝で11勝3敗。千秋楽で大栄翔は勝つか、敗れても優勝決定戦で勝てば令和3年初場所以来2度目の優勝が決まる。霧馬山は本割、決定戦と連勝すれば逆転での初優勝となる。
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翠富士の策も動きも見切っていた。優勝争いを左右する大事な一番、大栄翔は立ち合いであえて突っ込まない。左に変わってきた相手をよく見て、まずもろ手で捉える。しっかり正面に据えて、そこからギアチェンジ。足腰の強い小兵を的確に突き続け、土俵の外に吹き飛ばした。
「落ち着いて攻められた。誰が相手でも変わらず、と思っていた。勝ったことが良かったです」
重圧をものともしない完勝で2敗を守った。
充実ぶりが際立つ今場所、実は特別な思いを抱いて土俵に立っている。
所属する追手風部屋が春場所で宿舎を構える百舌鳥八幡宮(大阪府堺市)の宮司、工藤裕之さんが昨年12月、亡くなった。多くの人と引き合わせてもらうなど入門時から非常にかわいがってもらった人物だ。関係者によると、大栄翔は師匠の追手風親方(元幕内大翔山)とともに葬儀に駆け付け号泣したという。
追手風親方が「1月場所も頑張って何とか優勝をと思っていた。『あの人のために』という思いが力になって、良い方向に出ているのかも」と言えば、本人は「(工藤さんが)付いていてくれているんじゃないかと思っています」と語る。
単独トップで迎える千秋楽は、3敗の霧馬山と直接対決で雌雄を決する。勝てば13場所ぶり2度目の優勝。吉報を恩人に届けることはできるだろうか。