ルールに基づく国際秩序を守護する米国とその転覆を狙う中露が対立する世界を、第一次・第二次大戦の米国の介入前夜と対比させる議論が活発だ。ロシアのウクライナ侵略が長期化し中国の台湾侵攻への備えが加速する中、第三次大戦を回避する教訓は何か。論争を主導する米政治学者、ロバート・ケーガン氏の論考や発言から探ってみた。(ワシントン 渡辺浩生)
米ブルッキングス研究所上級研究員のケーガン氏はかつて、軍事力を通じた民主主義の理想と米国の国益の実現を唱えた「新保守主義(ネオコン)」の論客と呼ばれ、イラクへの軍事介入を支持した。今年1月に20世紀前半の国際秩序危機と米国の介入を検証した新著「The Ghost at the Feast」を出版。その後も寄稿などを通じ民主主義と専制主義が対立する世界と米国の役割を問いかけ続ける。
ケーガン氏は、ウクライナに侵略したプーチン露大統領について、2008年のジョージア、14年のクリミア半島への侵攻に対する「米国の控えめな反応が彼に進むよう後押しした」(米外交誌フォーリン・アフェアーズ)と指摘する。