令和初の統一地方選は、9道府県知事選が23日に告示されて幕を開けた。26日に6政令市長選、31日には41道府県議選と17政令市議選が告示されるなど、1カ月をかけて約1千の首長選、議員選が各地で行われる。
地方自治体は、首長と議員を直接投票で決める二元代表制だ。その点が、首相を国会議員の中から指名する議院内閣制と異なる。
首長は予算案や条例案を提案して政策を実行に移し、議会は議決や行政運営の監視を行う。2つの民意の代表が適度な緊張関係を保ちつつ協力し合い、地方自治を適正に運営する狙いがある。
そこをしっかりと理解し、首長と議員の選挙において、有権者の大切な権利を行使したい。
わが町の課題に関心を
気になるのは投票率の低さである。平成31年の前回統一選の平均投票率は道府県知事選が47%、道府県議選44%、市区長選46%、市区議選45%だった。町村長選と町村議選などを除けば軒並み5割を下回る。道府県知事選以外の投票率は、統一地方選が始まった昭和22年以降で最低だった。
国政選挙については、令和3年の衆院選の選挙区投票率が55%、4年の参院選が52%だった。この数字も決して十分ではないが、身近であるべき地方選の投票率がさらに低いことは、由々しき事態である。政策論争を活発化させて、地方政治への関心を取り戻さなければならない。
地方議会のなり手不足も深刻である。前回統一選では道府県議の26%、町村議の23%が無投票当選だった。いずれも過去最高だ。
これを放置するようでは民主主義の危機である。自分たちの地域の課題に無関心な社会に、明るい未来はないと心得るべきだ。政治への参画なくして社会の発展や民主主義の成熟はあり得ない。選挙こそが政治参画の肝である。
選挙では、候補者の政策課題への問題意識も問われる。各地域が共通して抱える最大の課題は、これから本格化する人口減少時代をどう乗り切っていくかだ。
厚生労働省の人口動態統計によると、令和4年の出生数は速報値で79万9728人となり、統計開始以来、初めて80万人を割り込んだ。女性1人が生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率についても、3年は1・30と過去4番目の低さだった。4年はさらに低下するとの見方がある。
もちろん、出生率を多少好転させても、出産期の女性が減少傾向にあるため、出生数が一朝一夕に改善するわけではない。それでも人口が減るスピードを遅らせることはできるはずだ。
自治体によっては、独自の子育て支援策を行うことで、出生率を向上させたところもある。若者や現役世代らのニーズを踏まえた少子化対策について、議論を深めるよい機会にすべきだ。
併せて自治体には、人口減少に耐え得る社会を構築する知恵も求められる。人口が減っても豊かな暮らしを維持するにはどうすべきか。予算や人材、インフラなどの限られた資源をいかに有効活用するか。方策を競ってほしい。
団塊の世代が7(2025)年に全て75歳以上の後期高齢者になり、要介護者の増加に拍車がかかることが予想される。介護サービスに支障を来さないようにするためどうするかは、地域が直面する高齢社会の大事な論点だ。
■コロナ後社会も争点だ
新型コロナウイルス禍への対応は、引き続き地域の重要な課題である。新型コロナは、5月8日から感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられる。その中で平時の暮らしをどう取り戻していくか。候補者は、コロナ後の社会のあり方を明確に示すべきだ。
特に医療面では5類移行後、幅広く一般の医療機関で新型コロナの外来、入院医療を受けられる体制に移る。住民の健康と命を守るため、これが円滑に進むよう自治体に求められる役割は大きい。
災害への対応も忘れてはならない。地震や津波、有事などさまざまな災害への備えは住民の命にかかわる。候補者がどの程度真剣に考えているのかを見極めたい。
誰が当選しても同じだと諦めては何も変わらない。少しでも住みよい町にするために、問題意識をしっかりと持った、解決に当たるにふさわしい候補者を厳しい目で選ぶことから始めよう。