<独自>露支持のハクティビスト40団体に倍増 日本にも牙向く

親ロシア派ハッカー集団「キルネット」が2022年9月上旬に交流サイトに投稿した「日本政府に宣戦布告する」との動画画面
親ロシア派ハッカー集団「キルネット」が2022年9月上旬に交流サイトに投稿した「日本政府に宣戦布告する」との動画画面

ロシアの侵略を受けるウクライナとその支援国に対しサイバー攻撃を行う「ハクティビスト」が現時点で40グループ以上確認されていることが、情報セキュリティー会社トレンドマイクロの調査で24日、分かった。複数のハクティビストはロシア支持を表明している。先進7カ国(G7)議長国としてウクライナ支持を鮮明にする日本への攻撃を主張する集団もおり、さらなる攻撃も懸念される。

ウクライナのサイバー攻撃対策の専門機関「CERT-UA」の情報などを基に、トレンドマイクロが分析。侵攻開始直後の昨年3月時点では19グループだったが、1年間で2倍以上に増加した。大量のデータ送信でシステム障害を引き起こす「DDoS(ディードス)攻撃」が中心で、対象は政府機関以外にも交通や金融、通信サービスといった企業も含まれる。

ハクティビストのものとみられる攻撃は、日本でも確認されている。昨年9月にはデジタル庁所管のポータルサイトなどが一時利用できなくなり、親露派「キルネット」がサイバー攻撃を仕掛けたとする犯行声明を通信アプリに投稿した。

キルネットは動画の中で、日本政府への宣戦布告を宣言している。「(日本は)反ロシアキャンペーンを行っている」とも強調した。また、日本に攻撃を行ったと主張する他の集団もいるが、これまでに大きな被害は確認されていない。

一方、トレンドマイクロの担当者は「状況によっては日本への攻撃が増える可能性もある」と指摘する。岸田文雄首相は21日にウクライナを電撃訪問してゼレンスキー大統領と会談し、追加の支援策などを発表。その裏ではモスクワで中露首脳会談が行われており、中露との対立姿勢をはっきりと示した日本に対し、ハクティビストが狙いを定めてくることも予想される。

トレンドマイクロの担当者はサイバー攻撃の対応策として「侵入を前提とした対策」が必要と指摘する。被害を最小限にとどめるため、実際にウイルスが侵入した際の影響範囲の確認や情報共有の方法を含む対応の事前準備を進めるなど、組織のレジリエンス(回復力や適応力)に特化した体制整備を呼びかけている。

ハクティビスト オンライン上でコンピューターに攻撃を加えるハッカーと、活動家を意味する「アクティビスト」を掛け合わせた造語。金銭目的とは違い、社会的・政治的な主張を目的とした思想的なハッカー、ハッカー集団のことを指す。英国で国家転覆を狙った人物、ガイ・フォークスの顔を模した仮面をトレンドマークとし、インターネット上の匿名性や自由を主張する集団「アノニマス」が知られている。

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