レジャーやホテルの業務を長く経験し、米国に17年間駐在した近鉄グループきっての海外通。小林哲也会長が「明朗快活、活発で決断が速い」と評価する仕事ぶりをうかがわせるように、記者の質問にもてきぱきとした口調で答える。
経営の原点は、まだ20代でプロ野球の近鉄バファローズ(現オリックス・バファローズ)を担当していた平成元年の日本シリーズ。近鉄が3連勝後に読売ジャイアンツ(巨人)に4連敗し、優勝を逃した歴史的瞬間を球場で目撃した。
「(7戦目の)試合前からチームの雰囲気が負けていた。絶対に最後まであきらめてはいけない」
その苦い記憶は、新型コロナウイルスの影響で、社長として率いていたKNT-CTホールディングスが「存続の危機」まで追い込まれたときに生きた。コロナワクチン接種の案内などの関連業務を自治体から受託するなどの取り組みが奏功して業績はV字回復。「旅行業の新しい価値が分かった」
コロナを機に、消費者向けから企業向けや海外事業へと業容を広げる路線の具体化を、新会長となる鉄道畑の都司尚氏と二人三脚で担う。「(社長という)一番大きなプロジェクトが回ってきた。今まで通りやらせてほしい」。新しい挑戦を前に意欲は十分だ。(牛島要平)