【ソウル=時吉達也】北朝鮮は24日、核魚雷の爆発実験を初公開し、水中からの核攻撃能力を誇示した。23日に終了した米韓の合同軍事演習「フリーダムシールド(FS)」に合わせ、北朝鮮は「対抗措置」名目で、核弾頭を運搬する多様なミサイルを発射。朝鮮半島の緊張激化の原因を米韓に転嫁しつつ、長期計画に沿い開発を加速させる実態が浮かび上がった。
朝鮮中央通信は24日、核魚雷「核無人水中攻撃艇」の「最終段階」の実験が、過去2年間で50回以上行われてきたと説明。津波を意味する「海溢(ヘイル)」と命名された攻撃艇が「水中爆発で超強力な放射能津波」を発生させ、米韓の艦船や港湾を「破壊、消滅させる」と強調した。
59時間を超える潜航の後で爆発実験を行ったことについて、専門家らは「日本海全域で運用が可能だとアピールした」と指摘。北朝鮮の説明通りに開発が最終段階を迎えているかは不明だが、韓国の北韓大学院大、金東葉(キムドンヨプ)教授は「無人水中兵器は世界的に相当現実化しており、北朝鮮の主張を過小評価はできない」と警戒する。
過去最大規模となった今回の演習前から、北朝鮮は多様な形態のミサイル発射を繰り返した。潜水艦からの巡航ミサイル発射を初公表したほか、19日には短距離弾道ミサイルの落下時に高度数百メートルで「空中爆発」させ、被害地域の拡大を図った。
また、米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)はこのミサイルが通常の発射台付き車両(TEL)ではなく、地下に埋設された格納庫から発射されたと報道。探知の難易度も高まりつつある。
「われわれの警告に背を向け、『(北朝鮮)占領訓練』を公然と進めている」(24日、朝鮮中央通信)。北朝鮮は米韓の「挑発」に対する受動的な対応を強調する。一方、今回公開された核魚雷は、21年に公表された国防力強化の5カ年計画で「5大目標」の一つに設定された「水中発射の核戦略武器の保有」に該当。開発を着々と進める狙いがうかがわれる。
米韓はFS演習の終了後も、北朝鮮への上陸を想定した「双竜訓練」を4月3日まで続ける予定。来週には米原子力空母「ニミッツ」も朝鮮半島周辺で展開する見通しで、北朝鮮がこれらに対抗し、新たな形態のミサイルなどを発射する可能性もある。