京都市の立命館大3年、浜野日菜子さん(21)が劇薬のタリウム摂取により殺害された事件で、大阪地検は24日、殺人罪で知人の不動産賃貸業、宮本一希容疑者(37)=殺人容疑で逮捕=を起訴した。
宮本被告の犯行を裏付ける直接証拠は乏しいが、捜査当局は事件前後の被告と浜野さんの行動を洗い出し、タリウム摂取の時間帯を特定。被告以外の第三者の関与を排除した。被告は事件当日に過去のタリウム関連事件の記事を検索しており、専門家は「犯人性を裏付ける重大な証拠だ」と指摘している。
捜査関係者によると、事件後、府警が被告のスマートフォンを押収して解析したところ、過去のタリウム事件やタリウム中毒について検索した履歴が複数回あることが判明。事件当日、浜野さんが体調を崩して両親に引き渡される前後の時間帯に検索していた。
タリウムの検出が確認されたのは死亡後で、府警は両親に引き渡す前にすでに被告に「浜野さんがタリウムを摂取した」という認識があったことを示す証拠とみている。
さらに捜査過程では被告の事件前後の行動や説明に数々の不自然な点が露呈した。捜査関係者によると、被告は逮捕前、浜野さんについて「会社のスタッフで食事をする仲」と説明。「体調を崩したので看病していた」とも話した。だが、体調不良の浜野さんを室内に残し、マンションを複数回出入りして証拠隠滅を図るようなそぶりを見せていたことや、浜野さんの両親に「仕事に行く」と噓をついて浜野さんを預けていたことも判明した。
ある捜査関係者は「逮捕前、浜野さんに拒否されたから救急車を呼ばなかったと説明していたが、それも虚偽の可能性がある」と話す。
状況証拠を積み重ねて立件に踏み切った捜査当局。甲南大の園田寿(ひさし)名誉教授(刑事法)は「状況証拠の中でもタリウムの検索履歴は、タリウムを摂取した時間帯に被告と被害者しかいなかったという状況とともに、重大な証拠となり得る」と指摘する。一方で、「より犯行の裏付けを強固にするには、被害者と被告のトラブルやタリウムの入手方法などの解明が必要だ」と話す。
実際、タリウムの入手経路や殺害の動機といった事件の核心そのものはいまだ「謎」のまま。捜査幹部は「なぜタリウムを投与して殺害しなければならなかったのか。引き続き捜査し、真相解明に全力を尽くす」と話した。
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