北京春秋

全人代の空に見た変化 開幕時もスモッグ、工場の操業優先

中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)が3月前半に開かれた。全人代の現地取材は6回目となるが、今回感じた微妙な変化は大気汚染が目立ったことだ。例年、全人代の期間中は会場となる北京では青空が広がることが一般的となっていた。北京周辺の工場に生産停止を命じて一時しのぎの晴天を作りだしていたのだが、今年は開幕日もスモッグに覆われていた。

最近まで続いた「ゼロコロナ」政策の後遺症に苦しむ中国経済の回復は喫緊の課題となっている。そのため青空を演出するよりも、工場の操業を優先したという見解を耳にした。

全人代開幕直前、日雇い労働者らが集まる北京郊外の「馬駒橋」を訪れると、夜明け前から数百人がひしめき合っていた。40代の男性は「コロナ禍が終わって人が多くなり、仕事が奪い合いになっている。このままだったら餓死する」という悲痛な言葉を口にした。

首相に就任した李強氏は、全人代閉幕後の記者会見で「景気の全般的な好転を促す」と強調した。李氏は、習近平国家主席の地方勤務時代に秘書長を務めた腹心で、習氏の意向を過度に重視するのではないかと市場関係者は懸念している。首相になったからには習氏ではなく、庶民の生活に目を向けることが求められているのは言うまでもない。(三塚聖平)

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