今国会で、令和5年度予算案をめぐる与野党攻防が最終盤を迎えている。野党第一党の立憲民主党が政権追及の柱に据えるのは、放送法に関する平成27年の総務省の行政文書だ。安倍晋三政権時代に「政治的公平」の解釈が変更されたと主張し、当時総務相だった高市早苗経済安全保障担当相に批判の矛先を向ける。その先に野党の活路はあるのか。
「もうここで終わりにしませんか。責任を取って大臣を辞職すべきではありませんか」
立民の小西洋之氏は20日の参院予算委員会で、文書問題を取り上げながら、繰り返し高市氏に閣僚辞任を迫った。
松本剛明総務相は同日の予算委で、総務省の文書に記された高市氏への担当局長による説明(レク)について、登場する官僚のうち3人が「捏造(ねつぞう)の認識はない」と説明していると明かした。一方で文書の内容に関して「正確性は確認できない」とも述べた。高市氏は「内容は全く不正確だ」と主張している。
高市氏がこの案件を「進退問題」に発展させてしまった以上、野党として追及しない手はない。さらに、高市氏が立民の杉尾秀哉参院議員に「私の答弁が信用できないならもう質問しないでください」と答えたことも問題になり、野党側は「憲政史上例がない答弁」(立民の安住淳国対委員長)として反発を強めた。
とはいえ、今回の問題が岸田文雄内閣の土台を揺るがし、野党に反転攻勢の機会をもたらす蟻の一穴になるとは思えない。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が18、19両日に実施した合同世論調査で、岸田内閣の支持率は45・9%。問題が浮上する前の前月調査から5・3ポイント上昇しているのだ。