最後に実現したエンゼルスの同僚「大谷対トラウト」の日米ドリーム対決に野球ファンは酔いしれた。米大リーグのトップ選手が数多く参加した第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。過去にない盛り上がりを見せて幕を閉じた。
大会主催者によると、観客動員数は史上最多の130万6414人で、前回2017年大会から約20%増えた。プエルトリコでは、1次リーグのドミニカ共和国戦の視聴率が平均約62%を記録。初出場の英国やチェコが歴史的勝利を挙げるなど、国際的な広がりも印象付けた。
国内でも中継の平均世帯視聴率は、準々決勝のイタリア戦で過去最高の48・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。米国との決勝は平日午前ながら42・4%(同速報値)をマーク。ヌートバー(カージナルス)が持ち込んだ「ペッパーミル」ポーズが少年野球の現場で流行するなどブームになった。
日本高野連によると、2014年度は17万312人だった全国の硬式野球部員は、昨年度13万1259人まで減った。栗山監督は「この選手たちに憧れ、たくさんの子供たちがまた野球をやってくれると思う」と期待する。大谷、村上(ヤクルト)ら代表選手の多くは、06、09年のWBC連覇に大きな刺激を受けた世代だ。3大会ぶりの世界一奪還で、野球人気の復活に夢を広げる関係者も少なくない。
一方で、大会創設時からの課題は積み残されたまま。米大リーグがシーズンを優先する傾向は今回も変わらず、高額年俸の選手の参加には制約も多い。サイ・ヤング賞3度のカーショー(ドジャース)は負傷歴から保険加入ができず、米国代表入りを断念した。
スポーツビジネスに詳しい近大産業理工学部の黒田次郎准教授は「スポーツはフェアでなければならない」と指摘する。WBC5大会の準決勝、決勝はいずれも米国開催。今回、1次リーグを日本と台湾で戦った組は、長距離移動を余儀なくされた。抽選による組分けも実施されず、各組のレベル差に偏りがある。
発展途上の「野球世界一決定戦」。大谷は「回数を重ねるごとに権威ある大会に近づいていると思う。(トップレベルの)選手が出ることによって、そういう大会に近づいていく」と期待している。(神田さやか)