岡田阪神よ、本当に大丈夫なのか-。オープン戦の終盤に来て「V構想」の足元が揺らぎ始めている。しかも投打ともに…。15年ぶりに復帰した岡田彰布監督(65)の腕の見せ所といえばそうかもしれないが、18年ぶりの「アレ」(優勝)を期待するファンからすれば気が気ではない状況だ。
いよいよシーズン開幕の3月31日・DeNA戦(京セラ)まで一週間となった段階で、阪神から景気の良い話があまり伝わってこない。オープン戦の成績は7勝7敗で勝率5割。チーム打率2割3分8厘、同防御率3・10はまあまあだが、指揮官の言葉は険しさを増している。その矛先は打線の中軸だ。
監督就任後、すぐに打ち出した4番一塁・大山、5番三塁・佐藤輝だが、2人のオープン戦打撃成績を見ると…。大山は14試合出場で打率1割4分9厘、本塁打0、打点1。佐藤輝は14試合に出場し打率2割4厘の1本塁打、6打点。ここ3試合はノーヒットで打席の中でも迷っている感じが見て取れる。オープン戦序盤は「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」を決め込んでいた? 岡田監督も我慢の限界に来たのか…。
「(2人の打順について)だから言うたやんか、理想よ。ずっと理想やったけど、どう思う? こっちが聞きたいわ」と報道陣に〝逆質問〟。さらに「だからタイミングなんか、自分で取るしかないやんか。ベンチから1、2って言われへんやんか。本人(佐藤輝)もノーステップとかして、タイミング取られへんからやろ。でも、飛ばんかったらあかんわな。スイング鈍くなったらな。鋭いスイングができんとやっぱり力負けしてしまうもんな」と佐藤輝の打撃フォームに容赦ないツッコミだ。
チーム得点は14試合で61点。それほど悪い数字ではないものの、やはり4番、5番がチャンスで打てないシーンが目立ち、ここに来ての3連敗は主軸の責任と言われても仕方ない。ベンチで首を振る岡田監督の姿も目立ってきた。
さらに心配の種は自慢の投手陣にも…。昨季は9勝5敗をマークした左腕の伊藤将司投手が左肩の違和感のため、予定していた開幕第2戦(DeNA戦)の登板を回避することが決まった。最後の調整の舞台となるはずだった25日のオリックス戦(京セラ)登板について、岡田監督は「そんなん無理よ」。代役は秋山になりそうだが、新人の年から10勝、9勝をマークした左腕の離脱が長期化しないことを今は祈るばかり。加えて中継ぎ左腕の岩貞まで左肩の違和感で1軍から離脱。これも早期の戦列復帰を祈るのみだ。
もっとも悪い材料ばかりではない。ドラフト1位ルーキーの森下(中大)は春季キャンプから評価をグングンと上げ、オープン戦でも躍動。14試合に出場し、打率3割5分、3本塁打、7打点。「一番ホームラン打ってるんやから。打つもんはそら、使わなしょうがないやんか」と岡田監督も話題が森下に移った時だけはニンマリ。現時点では開幕スタメン6番右翼が有力だ。WBCに派遣された今季から二塁を守る中野も世界の舞台で溌剌としたプレーを見せ、抑えを託す湯浅も力投していた。
阪神のオープン戦はきょう24日からのオリックス3連戦(京セラ)で終了。指揮官がヤキモキする大山と佐藤輝の打撃が上向いてくれば、森下の負担も減る。理想的な打線になるだろうし、2年前には10勝をマークした秋山が復活するならば伊藤将の離脱の影響も最小限度に収まる。しかし、目算が外れた時にはどのような次善の策があるのだろうか…。「アレ」を達成するにはシーズン80勝近くが必要。悲観的になる必要はないが、楽観はとてもできない岡田阪神の開幕前夜だ。
(特別記者)
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。