中国が、習近平国家主席が昨春提唱した安全保障の新たな概念「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」を外交面で前面に押し出している。他国への内政不干渉や、各国の社会制度の尊重といった原則を掲げる中国独自の概念だ。3月前半には、中国の仲介でイランとサウジアラビアが外交関係正常化で合意したことを「GSIの成功例」と位置付けており、地域・国際問題の仲介役として国際社会における影響力を拡大させようとしている。中国にとって有利な国際環境を作り出し、米国が主導する民主主義を基調とした国際秩序に対抗する狙いがあるようだ。
中国版ミュンヘン安保会議創設か
「今回の対話は、GSIを力強く実行する上で成功した実践となった」
中国外務省によると、外交担当トップ、王毅共産党政治局員は3月10日、イランとサウジが中国の仲介によって外交関係正常化で合意したことに関し、こう強調した。上海外国語大中東研究所の丁隆教授も、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報への寄稿で「GSIが対立を解消する羅針盤や路線図になり得ることを十分に示した」と称賛した。
GSIは、習氏が昨年4月に提唱した安全保障に関する独自の概念だ。基本的な内容は以下の6点からなる。
①共同、総合、協力、持続可能な安全保障観を堅持する。
②主権と領土保全を尊重し、他国への内政干渉をせず、各国の発展の道と社会制度を尊重する。