今週のテーマは、3期目に入った習近平・中国国家主席のロシア訪問だ。ロシア正規軍ウクライナ侵攻後初の中国首脳訪問ということで、筆者には、ありがたいことにテレビ各局のニュース番組から3夜続けてお声がかかった。メディアの主たる関心は、中国が中東のイラン・サウジアラビアに続き、ロシア・ウクライナでも「仲介」外交を進める理由とその成否だった。中国の意図は「首脳レベルでウクライナ和平を実現させ、世界に存在感を誇示すること」というのが大方の見立てだが、本当だろうか。
「戦狼」から「関与」へ?
確かに中国外交は変わりつつある。理由は不明だが、昨年の共産党大会以降、従来の対外的な自己主張中心から、水面下の外交交渉を重視するようになった気がする。
西側にとってバッドニュースはあの稚拙な「戦狼」外交に代わり、より洗練された「関与」外交が始まったこと。グッドニュースは、少なくとも今の中国には、ウクライナでも中東でも本格的「仲介」外交を行う実力がないということだ。訝(いぶか)る向きもあるだろうが、まずは中東から説明しよう。
招き入れられた中国?
今月10日、中国外交担当トップの王毅共産党政治局員は、北京を訪問したイランとサウジアラビアの高官の間で満面の笑みを浮かべた。両国が、中国の「仲介」により外交関係正常化と大使館再開などで合意したからだ。中国の努力に水を差すつもりは毛頭ないが、両国関係正常化は既にイラクやオマーンの仲介の下、水面下で動いていた。