大阪都構想なき乱戦 成長戦略、IR、子育て支援への期待と懸念

大阪府知事選が告示され、候補者の演説に集まった人たち=23日午前、大阪市天王寺区(南雲都撮影)
大阪府知事選が告示され、候補者の演説に集まった人たち=23日午前、大阪市天王寺区(南雲都撮影)

任期満了に伴う大阪府知事選が23日告示され、4年に1度の統一地方選がスタートした。地域政党「大阪維新の会」発足後初めて看板政策「大阪都構想」の是非が争われない知事選は、再選を目指す現職と新人の計6人が立候補を届け出て、乱戦の様相を呈す。候補者はどのような政策を訴え、有権者は大阪のかじ取り役に何を期待するのか。

成長戦略

「大阪府、大阪市が一体になって大阪の成長戦略を実行する」

維新代表で現職の吉村洋文氏(47)は23日、大阪市中央区の南海難波駅近くで第一声を上げた。維新前代表の松井一郎市長と26日告示の市長選に立候補する維新幹事長で府議の横山英幸氏も駆けつけた。

維新は今回のダブル選で府市一体の成長戦略を重点政策の柱とし「首都圏に対抗できる副首都圏の確立」をうたう。同市北区の再開発地区「うめきた2期」や新大阪駅周辺(同市淀川区)などでインフラを整備し、経済成長を目指す。

同市北区で飲食店を経営する安藤育敏さん(41)は「インバウンド(訪日外国人客)を呼び込むため、インフラ整備で大阪を魅力ある街にしてほしい」と求める。中小企業の情報セキュリティー対策を支援する一般社団法人の金森喜久男(きくお)代表理事は「東京に比べて中小企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が遅れており、そのための公共投資も重要」と注文を付けた。

IR誘致

府市が人工島・夢洲(ゆめしま)(同市此花区)への誘致を進めてきたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)については、土壌対策やギャンブル依存症への懸念が根強い。府は昨年、区域整備計画の認定を国に申請したが審査が続いている。

維新は成長戦略の中でIRを新たな観光拠点と位置付け、依存症対策の拠点設置を掲げる。誘致の是非は決着済みとの立場だ。

一方、政治団体「アップデートおおさか」が擁立した無所属新人の法学者、谷口真由美氏(48)はこれまでに誘致の是非を問う住民投票を実施する考えを表明。この日、JR大阪駅前で「検証し、問い直しましょう。それでこそ街がよくなる」と訴えた。

同じく無所属新人で元参院議員の辰巳孝太郎氏(46)=共産推薦=はJR天王寺駅前で「人の不幸を踏み台に福祉や教育を行うのは間違い」と批判。参政党新人の歯科医師、吉野敏明氏(55)も同市北区の商業施設近くで「一番の依存症対策はカジノを作らないこと」と訴えた。

有権者の間でも賛否は分かれる。夢洲近くの宿泊施設従業員、山本数樹さん(29)は「大阪の宿泊・観光関係者にとってIRは明るい話題。誘致の進展に期待する」。ギャンブル依存症経験者として支援に取り組む中島康晴さん(41)は「依存症は本人や周囲の人の人生をボロボロにする怖さがあるが、日本は認知度が低い。実のある対策を実行できるのか」と疑問を呈した。

子育て支援

子育て支援策について、吉村氏は公立、私立高校の授業料無償化の要件としていた所得制限を撤廃すると主張。谷口氏は0~2歳児の保育所、幼稚園などの利用料を無償化するとした。

共働きで2児を育てる同市中央区の会社員、高山秀美さん(35)は「少しでも金銭的な余裕ができれば子供を産みたい人も増える。本気で子供のことを考えている候補者に一票を投じたい」と話した。

同市西成区で子供食堂を運営するNPO法人の川辺康子代表理事(57)は新型コロナウイルス禍での休校を機に不登校の子供が増えたと感じている。「通学している子供たちだけでなく、不登校の子供も学べる環境を整えてほしい」

諸派新人で執筆業の稲垣秀哉氏(53)と、政治家女子48党新人で薬剤師の佐藤さやか氏(34)もこの日、立候補を届け出た後、街頭で支持を訴えた。

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