FRB、金融不安とインフレで同時対処の難局

FRBの本部=ワシントン(ゲッティ=共同)
FRBの本部=ワシントン(ゲッティ=共同)

【ワシントン=坂本一之】米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は22日の記者会見で、「銀行システムは健全だ」と繰り返し、金融不安の払拭に躍起となった。安定した金融システムを前提に、インフレ抑制を優先して利上げに踏み切ったが、対応を見誤れば経済の混乱を招きかねない。パウエル氏はインフレ抑制と金融不安への同時対処を迫られる難しい局面に立たされている。

「物価の安定はFRBの責務だ。物価が安定しなければ、経済は誰のためにも機能しない」。パウエル氏は会見で、インフレ抑制への決意を改めて示した。

FRBは昨年、記録的なインフレに対処するため、異例となる0・75%の利上げを4会合連続で実施。昨年3月からの利上げは今回で9会合連続に達した。

ただ、急ピッチの利上げが経済に及ぼす悪影響を完全に回避することはできない。今月10日、米シリコンバレー銀行が利上げに伴う保有国債の含み損が一因となり経営破綻した。

さらに米シグネチャー銀行が破綻し、スイス金融大手クレディ・スイスも経営危機に陥るなど、金融不安が高まり市場の一部ではFRBが今回、利上げを見送るとの見方もあった。

金利引き上げによる銀行への悪影響で金融不安がさらに広がれば、貸し渋りをする金融機関が出てくる可能性も排除できない。FRBは今回、慎重な判断が求められていた。

それでもFRBが利上げに踏み切った背景には、人手不足による賃金上昇などで続くインフレ圧力がある。FRBがインフレ対応の判断で重視する個人消費支出(PCE)物価指数が1月のデータで前年同月比5・4%上昇となり伸びが拡大した。インフレ対応の手を緩めれば、物価上昇が長期化しかねない。FRBは今回、「銀行システムは強固だ」とし、利上げを決断した。

パウエル氏は今後の判断に関し「データを注意深く監視し影響を慎重に評価する」と強調する。FRBは根強いインフレの抑制と金融不安の同時対処でより繊細な対応が求められることになる。

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