睡眠に昆虫食…NTT東、非通信に活路 固定電話離れ進み 売上高の50%以上に

NTT東日本などが開催した生演奏を聞きながら眠りに落ちるイベント=18日、神奈川県箱根町(同社提供)
NTT東日本などが開催した生演奏を聞きながら眠りに落ちるイベント=18日、神奈川県箱根町(同社提供)

NTT東日本が本業とは違うジャンルで新規ビジネスを強化している。先端ITを用いて睡眠の質を高める「スリープテック」と呼ばれる分野や、昆虫食など事業の幅を広げている。固定電話離れで通信事業が頭打ちになる中、社会課題の解決につながるビジネスを非通信事業として模索。令和8年3月期までに非通信事業の売上高比率を半分以上に引き上げる目標の達成に向け、新規ビジネスに力を注ぐ。

「寝具メーカーが中心の睡眠関連市場に当社がプラットフォーマーとして他事業者の参入を促し、市場全体を拡大させたい」

NTT東のスリープテック事業ディレクターの尾形哲平氏は今月18日に神奈川県箱根町の老舗温泉旅館で開いた〝寝落ちするための演奏会〟でこう語った。音楽が睡眠に与える影響をITを駆使して検証し、選曲。尾形氏らの狙い通り、参加者はささやくように歌う生演奏を聞きながら眠りに落ちた。

同社はスリープテックに2年から専業ベンチャーと協業して取り組む。当初は社内の中堅社員の業務が増える中、脳の働きを最大化するためには睡眠の質を向上させることが必要という社内の声から始まったという。現在は睡眠関連市場に参入した飲料メーカーへのコンサルティングなども行っており、「睡眠の悩みは一つの企業だけでは解決できない。われわれがハブ(中核)となって複数企業と組むのは、通信インフラ会社らしい取り組みと考えている」(尾形氏)。

NTT東はスリープテック以外にも昆虫食、農業などにも注力している。昆虫食では食料不足の解決策として注目される食用コオロギの養殖の支援を1月に始めた。競技人口が増えて人気が高まっている「eスポーツ」も専門子会社を設立して力を入れる。佐藤文武担当部長は「インターネットや電話の会社ではないように見える事業も多いが、地域社会貢献や社会課題解決という点では通底している」と語る。

今後も生活をより豊かにすることに貢献していくため、健康や芸術などへ非通信事業の領域を広げる考え。NTT東の売上高のうち、非通信事業の割合は35%程度とされ、これを8年3月期までに50%以上に引き上げる計画だ。

地域社会への貢献の意味合いもあるため、新規ビジネスには撤退目安を設定していない。だが、非通信事業は他の通信会社も強化しており、競争の激化が必至の情勢。目標達成に向け、新規ビジネスにどれだけ多くのリソース(経営資源)を振り向けることができるかがポイントになる。(大坪玲央)

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