イスラエル政権がパレスチナ巡り暴言連発、再入植の動きも 国際社会で批判相次ぐ

【カイロ=佐藤貴生】イスラエル・ネタニヤフ政権のパレスチナへの対応をめぐり国際社会の批判が相次いでいる。閣僚が「パレスチナ人など存在しない」「歴史も文化もない」などと暴言を連発したのに続き、政権は約20年前に撤収したユダヤ人入植地の再建に道を開く修正法案を国会で可決させた。「建国史上最右派」とされる政権は、今後もパレスチナへの圧力を強める公算が大きい。

「大イスラエル」の地図掲げ

暴言を繰り返したのは極右政党「宗教シオニズム」のスモトリッチ財務相。19日にパリで開かれた会合で発言したもので、パレスチナ自治政府は「ユダヤ人の過激主義を助長する」と非難した。演壇には「大イスラエル」と称された地図が掲げられ、ヨルダンも含まれていたことから、ヨルダン外務省がイスラエルの大使を呼んで「無責任で挑発的だ」と抗議する事態にも発展した。

イスラエルとパレスチナの当局者は暴言があった19日に、米国やエジプト、ヨルダンの代表団と協議し、対立をあおる行動の自制で合意したばかりだった。

政権は21日には、ヨルダン川西岸の4つの小規模な入植地からの撤収を定めた2005年の法律について、ユダヤ人入植者が再定住できるよう修正した法案を国会で可決させた。米国務省が「極めて挑発的だ」としたほか、欧州連合(EU)やエジプトも「(パレスチナとの)信頼醸成を妨げる」などと懸念を表明した。

暴力の連鎖、激化の恐れ

イスラエルは1967年に占領した西岸で入植活動を拡大し、130を超える入植地に45万人以上のユダヤ人が居住している。

昨年末に発足した政権はネタニヤフ首相の右派リクードのほか対パレスチナ強硬派の極右政党、ユダヤ教の戒律に厳格な超正統派の政党などで構成される。パレスチナ人によるユダヤ人襲撃がしばしば発生し、イスラエル軍はテロリスト掃討作戦を展開。今年に入り殺害したパレスチナ人は約80人に上る。

23日には、多くの国でイスラム教のラマダン(断食月)が始まった。信仰心や反イスラエル感情が高まり、パレスチナとイスラエルの暴力の連鎖が激化する恐れもある。

ネタニヤフ政権は1月前半、司法の権限縮小を柱とする司法制度改革を行うと表明し、毎週末の大規模な抗議デモがイスラエルで2カ月以上続いている。

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