英、ウクライナに劣化ウラン弾供与へ 露は「核の要素」と反発

英国の主力戦車「チャレンジャー2」=2022年9月(ゲッティ=共同)
英国の主力戦車「チャレンジャー2」=2022年9月(ゲッティ=共同)

【ワルシャワ=板東和正】英国が破壊力の強い劣化ウラン弾をウクライナに供与することを明らかにし、ロシアが強く反発している。劣化ウラン弾は通常兵器だが、ロシアは「核の要素を備えた兵器だ」と主張。英国防省は「核兵器とは関係がない」と説明し、ロシアは故意に誤った情報を流そうとしていると警戒する。

英紙ガーディアンなどによると、英国防省のゴールディー閣外相が20日、ウクライナに供与する主力戦車「チャレンジャー2」の砲弾の一部に「劣化ウラン弾が含まれるだろう」と議会で発言した。

劣化ウランは、天然ウランを核兵器や核燃料に使用するために濃縮した後の残存物。劣化ウランを使った砲弾は鉄や鉛よりも密度が高く、貫通力が強い。英政府は劣化ウラン弾について「(露軍の)最新の戦車や装甲車を倒すのに非常に効果的だ」(ゴールディー氏)としており、ウクライナの抗戦力を引き上げる狙いで供与する方向だ。

これに対してプーチン露大統領は21日、英国が劣化ウラン弾を供与した場合、「西側諸国が集団的に核の要素を備えた兵器の使用を開始したものとして、ロシアは対応しなければならないだろう」と警告した。

英国のクレバリー外相は22日、劣化ウラン弾は「核兵器ではなく純粋な通常兵器だ」と指摘。英国防省も「英軍は数十年間(砲弾に)劣化ウランを使ってきた」とし、「ロシアが故意に誤った情報を流そうとしている」と批判した。

劣化ウラン弾をめぐっては、炸裂(さくれつ)する際に飛散する放射性物質が人体や環境に与えるリスクも指摘されており、議論が続きそうだ。英国防省は、人体や環境に影響を与える可能性は「低いとみられる」とする英王立協会などの評価を挙げて懸念払拭に努めている。

劣化ウラン弾は、米軍が湾岸戦争やイラク戦争で使用した。国連環境計画(UNEP)は2022年の報告書で、劣化ウランは「皮膚刺激や腎不全を引き起こし、がんのリスクを高める可能性がある」と指摘している。

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