米国との決勝戦。日本は八回のダルビッシュ(パドレス)から、九回の大谷(エンゼルス)へと継投した。豪華な「世界一」リレーを実現させたのは、チーム最年少の20歳の高橋宏(中日)、大勢(巨人)、伊藤(日本ハム)ら若き投手陣だった。七回までに登板した5投手で、米大リーグのスター選手が並ぶ米国打線を相手に1失点。栗山監督は「日本が勝てるなら、投手だと思ってやってきた」と自信を持っていた通り、全員が役割を果たした。
奪三振は大会新、群を抜く安定感
今大会の日本投手陣の安定感は、群を抜いていた。防御率2・29は出場全20チーム中トップ。7試合で奪った80三振は、第2回大会(2009年)の日本が持つ75奪三振(9試合)を上回る、大会新記録となった。与えた四球も1試合平均で約1・57個と、断トツに少ない。球数制限が設けられているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、投手陣の層の厚さは最大のアドバンテージだった。
米大リーガーの招集成功も大きかった。準決勝で敗退した過去2大会は、国内組が主力。今大会は、直前に鈴木(カブス)が左わき腹痛で欠場したものの、大谷ら4人がメンバーに名を連ね、活躍した。メジャーを知る選手のアドバイスは有効で、国内組の選手たちに安心感を与えた。
最新の練習や調整法を共有
ダルビッシュは2月の宮崎の強化合宿から参加し、チームの結束を固めるのに一役買った。WBC使用球の扱い方だけではなく、若手にトレーニング方法や変化球の握りなども伝えた。感覚に頼らず、データを重視するメジャー流の最新の練習や調整法を共有。栗山監督は「5年、10年とたったときに、日本の野球界にとって大きな財産になるのは間違いない」と力を込めた。メジャー流を学んだ日本代表の選手たちが所属球団へと戻り、情報を還元することで、さらなる日本球界の発展が見込める。
日本ハム監督を10シーズン務め、東京五輪後の21年に日本代表の常任監督となった栗山監督。日本ハム時代のまな弟子、大谷ら大リーガーの招集は指揮官のキャリアと人柄に負う部分も大きい。栗山監督は大会後、退任の意向を表明。侍ジャパンは新監督とともに、次回26年大会での連覇に向けて再スタートを切る。今後も継続して「最強メンバー」を結成するには、今回の経験を球界全体が共有し、継承していく必要がある。
◇
第5回WBCで野球日本代表は、3大会ぶりの世界一奪還を果たした。世界一への要因と今後のWBCのあり方を探る。