山本耕史が開く「鎖国した心」 海外から幕末を見るミュージカル「太平洋序曲」

ミュージカル経験豊かな山本耕史だが、ソンドハイムの楽曲は「セオリーじゃないメロディーとか頭を使わないと歌いこなせない」と苦心する(後藤薫氏撮影)
ミュージカル経験豊かな山本耕史だが、ソンドハイムの楽曲は「セオリーじゃないメロディーとか頭を使わないと歌いこなせない」と苦心する(後藤薫氏撮影)

黒船の来航で鎖国から開国へとかじを切る激動の時代の日本を描いたミュージカル「太平洋序曲」(ジョン・ワイドマン脚本)が4月8~16日、大阪市北区の梅田芸術劇場で上演される。外部からの刺激で国が混乱し変わっていく様は新型コロナウイルス禍に直面する現代ともどこか重なる。観客を物語へといざなう狂言回し役の山本耕史は「日本人がどう立ち向かい立ち回ったのか。今だからこそ伝えられるもの、感じるものがある」と語る。

1976年にブロードウェーで初演。「海外からみた日本」がミュージカルの巨匠、スティーブン・ソンドハイムの印象的な楽曲によって立ち上がる。日本では平成12年に宮本亜門の演出で初演され、今回はイギリス人のマシュー・ホワイトが演出する。

 「太平洋序曲」で狂言回しを演じる山本耕史(岡千里氏撮影)
「太平洋序曲」で狂言回しを演じる山本耕史(岡千里氏撮影)

アメリカ海軍のペリー提督に開国を迫られ近代化へと進むことになる幕末期の混乱を、幕府の役人である香山弥左衛門とジョン万次郎の2人を軸に描く。その歴史の転換点を俯瞰(ふかん)しながら物語を進行するのが、山本演じる狂言回し(松下優也とダブルキャスト)だ。

海外作家が手がけた今作の前提として山本は「史実を勉強して書かれてはいるけれど、史実とは違うファンタジーな感じ」と強調する。そして観客が違和感を覚えないために、史実との〝ズレ〟を調整する役割を自身の役に見いだす。「狂言回しが遊びで世界観をいじっているように見えるとか工夫がいる。アイデアを提示したい」と意欲的だ。

NHK大河ドラマ「新選組!」や「鎌倉殿の13人」など時代劇経験が豊富で、共演者の中で最も時代劇に詳しいと自負する。海外演出家の視点を尊重しつつも、将軍への礼儀作法など「(過去の上演より)日本のリアルを盛り込めると思う」と自信を見せる。

時代劇ではなく、日本人も納得できるエンターテインメントとしての完成を狙う。「この作品で、日々疲れて鎖国した心を開国してください」とユーモアも忘れず舞台をアピールした。(田中佐和)

問い合わせは梅田芸術劇場(06-6377-3800)。

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