岸田文雄首相のウクライナ訪問を巡り、自民党の高木毅国対委員長は22日、立憲民主党の安住淳国対委員長と会談し、早期に衆参両院の本会議を開き、首相から報告を受けることで合意した。衆院は24日、参院は27日にそれぞれ開く。23日午後には、首相が出席する参院予算委員会集中審議も開かれる。与野党には訪問への評価が広がる一方、官邸の情報管理に関する懸念や日本の対ウクライナ支援の脆弱性を指摘する声も出ている。
首相はキーウ訪問について、安全上の理由から海外出張時の慣例である国会の事前承認は得なかった。野党側は例外的に認める一方、首相に国会への報告と質疑を求めていた。
高木氏は会談後、「国会に了解を取ることは原則必要だが、今回は特殊な事情もある。事前に了解がないまま行くことはあってしかるべきだ」と記者団に語った。
安住氏は「内々に『国会承認を得ないで行ってください』と了解していた。異議を申し立てることはない」と説明した。その上で「G7(先進7カ国)の議長国として(ウクライナの)ゼレンスキー大統領にどういうメッセージを伝えたのか。対露問題にどう臨むのか。考え方をただしていきたい」と述べた。
松野博一官房長官は22日の記者会見で、今回の国会への対応について「秘密保全、安全対策や危機管理に万全を期すべく、慎重にウクライナ側と調整を重ねた結果、急遽準備が整ったため、やむを得ず事前報告なしに訪問することとなっ た」と説明した。
首相が中露首脳会談と同じタイミングでキーウを訪問したことを巡っては、22日も与野党幹部から評価する声が相次いだ。
自民の森山裕選対委員長は「(中露の)会談も行われる中、G7の議長国として訪ねたことは非常に大きな意味があった」と指摘した。国民民主党の玉木雄一郎代表も「(日中)どちらのアジアのリーダーが民主主義と法の支配の守護神であるかを世界にアピールする最大の機会になった」などと強調した。
一方、立民の泉健太代表は東京都内の講演で、「(首相が)まだキーウに着いていない段階で報道が流れてしまうことの危険性を官邸がどう考えていたのか」と言及し、国会審議で情報管理の在り方をただす考えを示した。
日本維新の会の馬場伸幸代表は党会合で、首相の訪問を「大きく評価すべきではない」とクギを刺した。日本がウクライナに兵器を供与できない点や情報管理の問題を挙げ「大きな貢献ができない状況でわざわざ行ったことで、先方にどういう印象を与えたのか」と述べた。(児玉佳子)